ジェフ・リンがプロデュースした『Full Moon Fever』を991円セールで手に入れる事ができて喜んでたら、06年に再びジェフ・リンがプロデュースした作品がある事を知った。しかもセールより安い892円。これは速攻で買うでしょ。
しかしこの作品には気付かなかったなあ。15年の時を経て、再びジェフとトムが組んでたなんて。期待は高まる。
06年リリース、ソロ名義では3rdアルバム。
1曲目「Saving Grace」。
ぐつぐつと煮えたぎるような感覚。決して爆発せずパワーを溜め込んでいる感じのオープニング。
2曲目「Square One」。
透き通るようなアコギの調べが美しい、おとなしくさりげない曲。
3曲目「Flirting With Time」。
サビがすごくキャッチーで、思わず一緒に歌いたくなってしまう。シングルにするならこれだな。適度に力の抜けたサウンドが、逆にスケール感を大きくみせている。
4曲目「Down South」。
アコギ主体の、のんびりでもなく軽快でもなく絶妙なさじ加減のサウンド。
5曲目「Jack」。
ささやくように歌うトムが印象的。どことなく怪しい雰囲気。
6曲目「Turn This Car Around」。
粘っこいサウンドかと思いきや、サビでちょっぴり華々しくなる。
7曲目「Big Weekend」。
このアルバムの中では珍しくアップ・テンポの曲。だけど、以前だったら、もっと派手なサウンドに仕上げただろうなあ。とは言え、アコギ、ギター、ハーモニカの融合するサウンドは心地良い。
8曲目「Night Driver」。
ギター・ソロなんかはいかにもジェフ・リンの音という気がしたけど。
9曲目「Damaged By Love」。
とても優しい曲。サビも憶えやすく、いい子守唄になりそう。
10曲目「This Old Town」。
カントリーっぽいのほほん加減もあるけれど、あくまでロックにしている。ピアノ・ソロが味わい深い。
11曲目「Ankle Deep」。
ウィルベリーズの「Handle With Care」を思い出させるようなキャッチーな感じがあって、これもシングルにしていい出来。これもサビのメロディは中毒性がある。サウンドには軽快な中にも安心感が。
12曲目「The Golden Rose」。
このアルバムは最後までスローで通すなあ。ただラストのこの曲はちょっとやるせないスパイスが効いてていい感じ。
一聴して思ったのは...力抜き過ぎでしょ、ジェフ・リン!
肩の力を抜いてるを通り越して、全然力を発揮してないなと思った。それほど、ジェフ・リンらしさが出てなかった。ウィルベリーズ関連でガッツリ組んでいた90年前後の作品はいかにもジェフ・リンというサウンドだったけど、このアルバムはジェフらしさは薄め。ちょっと物足りなかった。
今回はジェフは作詞・作曲には関わってないらしく、すべてトムの単独作品。
軽快でアップ・テンポな曲もほとんどなく、華々しさには欠ける。トムやジェフの年齢に即した渋めのサウンドなのか。
というわけで、全体的におとなしめな、控えめなアルバム。
決して嫌いではないし、一応の合格点は付けられるけど、ジェフとトムが組んだなら、もっといいのができたはずと思わずにはいられなくなってしまう歯痒さが。
ただ、聴きこめば、やはりあちこちにジェフ・リンらしさが見えてきて、楽しいと言えば楽しい。
全体を貫いている安心感もなかなか好感で、聴けば聴くほど味わいの出る作品なのかもしれない。ウキウキするようなポップ感はないけれど、アコギ中心のゆったりとした大人のアルバム。
↑ 「Flirting With Time」。
サビがすごくキャッチーで、思わず一緒に歌いたくなってしまう。シングルにするならこれだな。適度に力の抜けたサウンドが、逆にスケール感を大きくみせている。