音楽を聴く事が僕の完全な趣味となったのは中2の頃からなんだけど、それより1年ほど前、中1の頃に、ラジカセを買ってもらったのを機に、音楽でも聴いてみようかなあと思った時があった。それで、何を聴いてみようか、となった時に、なんとなく
「中森明菜を好きになろうかなあ」
と思ったんだよね。それで、買ったのが、この『メモワール』という明菜初のベスト盤のカセットテープ。
どうしてこの作品を買ったのかは憶えてない。当時はベスト盤とオリジナル・アルバムの違いさえ知らなかったのだから。「少女A」くらいは知ってて、好きな曲だったんだけど、たぶんこの曲がなんとなく目当てだったのかなあ。
でも、結果的に、さすがベスト盤というか、どの曲も良くて、音楽を聴くという行為は心地良いものだなあと思わせられた。この頃、家のお手伝いをして小遣いをもらうというのにハマってたので、よく台所にラジカセを持ち込んで、皿洗いをしながら、このテープを聴いてたのが思い出だ。
それからCD時代になって、このテープを聴く事も出来なくなってたから、ずっとCDで買い直したいなと思っていた。でも、僕が探している時にはCD化されてなかったり、その後CD化された時には気付いてなくて、限定盤だったため、気付いた時には既に売り切れだったりで、ずっと手に入れる機会をなくしていた。
そしたら、今年になって、明菜のオリジナル・アルバムが低価格で再発される事になって。そのラインナップにはベスト盤は入ってなかったんだけど、これを機に、という事で、この『メモワール』も「再プレス」という形でリリースされる事に。SACD/CDハイブリッド盤という事で、低価格ではなかったのが残念で、ちょっと躊躇したんだけど、この機会を逃したら、このアルバムを手に入れる機会は訪れないかもと思って、思い切って購入する事に。
83年リリースのベスト盤。
1曲目「禁区」。
細野晴臣作曲で、若干ピコピコしたサウンドが特徴のシングル。いい曲だ。「♪それはちょっとできない相談ね」というオチが艶めかしい。
2曲目「トワイライト-夕暮れ便り-」。
来生たかお作曲のシングル。しっとりとしながらもサビは情感たっぷり。
3曲目「キャンセル!」。
ロック・テイストの曲で、サビは煽りまくるホーンと共に胸に迫るものがあるのに、Bメロなんかは切なくさせるメロディなのがポイント。
4曲目「あなたのポートレート」。
イントロの激情的なピアノのフレーズの後に「♪軽くウェーブしてる」と明菜のヴォーカルが冒頭から聴き応え充分。これまた来生たかお作曲。
5曲目「瑠璃色の夜へ」。
ささやくように歌う明菜が儚くも愛おしい。
6曲目「少女A」。
明菜を認識した初めての曲。アイドルなのにツッパリ路線というのもたまらなかった。
7曲目「少しだけスキャンダル」。
横浜銀蠅が作った曲という事で、これもツッパリ路線。横浜銀蠅はあまり好きじゃないけど、この曲はいいね。明菜もセクシーで、大人の女を感じさせる。
8曲目「スローモーション」。
デビュー曲。昔はとりたてて好きじゃなかったけど、いつの頃からか大好きになった。最高のデビューじゃないかと。何度聴いても胸が苦しくなる。苦しいのに心地良い。この曲が好きになってからは来生たかおに興味を持つようになった。ハズレがないもん、来生たかお。
9曲目「銀河伝説」。
「♪胸のホックがはずれたのはふくらむ想いあなたのせい」という歌詞にドキッとさせられた後、「♪星が交わるとき」と明菜のヴォーカルが弾ける。
10曲目「1/2の神話」。
大沢誉志幸の作る曲はカッコいいなあ。キレもあって、タンカを切る明菜もカッコいい。でもCメロで「♪誰も私解ってくれない」と弱気な面も見せるのもいい。
11曲目「ヨコハマA・KU・MA」。
このアルバムは全曲好きだけど、その中でもとび抜けて好きなのがこの曲。これが聴きたくてCDで買い直したと言ってもいい。これは風を感じながらドライヴしている情景が目に浮かぶ。ものすごく甘美でドラマチックなメロディとサウンド。明菜に惚れる。買ってから気付いたけど、南佳孝の作曲だって。なるほど、大好きな「モンロー・ウォーク」と同じ空気を感じる。「モンロー・ウォーク」といい、薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」といい、この曲といい。南佳孝に魅力を感じる。いつかちゃんと聴かなきゃな。
12曲目「セカンド・ラブ」。
来生たかお作曲のシングル。来生たかお大活躍だなあ。これもまた名曲。バラード苦手の僕でも、ここまで切なく完璧なものには唸らざるを得ない。
聴き終わってみて。
久し振りに聴いたアルバムだというのに、懐かしさというか、感動はそれほどなかったなあ。
むしろ、もう聴き慣れたというか、聴き飽きたものを改めて聴いた感触。
もっと懐かしい感動が来るかもと期待してたので、ちょっと残念な印象。
もちろん、どの曲もいい曲だという認識に変わりはないんだけど、あまりにも聴き馴染んでたというか。大きな感動までは至らなかった。
だけど、見事に全曲素晴らしい曲で捨て曲なしの、素晴らしいアルバムというのは言えるわけで。それをちゃんとCDという形で手に入れられた事には満足。
中森明菜というアイドルは、やはり他のアイドルとちょっと違う。アイドル王道の、いわゆる明るく元気な曲というのはまったくない。しっとりにせよツッパリにせよ、大人を感じさせる曲を歌うアイドルだ。
それにしても初期の明菜、いい曲ばかり。オリジナル・アルバムにも興味が出てきてしまう。
↑ 「ヨコハマA・KU・MA」。
このアルバムは全曲好きだけど、その中でもとび抜けて好きなのがこの曲。これが聴きたくてCDで買い直したと言ってもいい。これは風を感じながらドライヴしている情景が目に浮かぶ。ものすごく甘美でドラマチックなメロディとサウンド。明菜に惚れる。買ってから気付いたけど、南佳孝の作曲だって。なるほど、大好きな「モンロー・ウォーク」と同じ空気を感じる。