ビートルズは、自分たちの作った音楽が「流行」になった。
ストーンズは、その「流行」に乗った音楽を作ろうとした。
そして失敗してしまう所も愛おしくて好きなのだが(笑)。
まあ、この時点ではやはりビートルズとの差は大きかったんだなあと。
ジャケットもビートルズの『Sgt.Pepper's』と似たものにして、サウンドも、サイケやインドにしてと、果敢に時代に挑戦している。それまでのストーンズのサウンドとは大きく違うという事で、ストーンズはこんな事をやるべきじゃなかったとか、失敗作だとか、とにかく「恥」みたいな作品として扱われる事の多いアルバムだけど。
ストーンズ流サイケとはどんなものか、僕は大いに興味あった。少なくとも、ブルースやカントリーよりは僕好みだろう、と。
67年リリースのアルバム。
1曲目「Sing This All Together」。
とにかくいろんな音が鳴ってる印象で、華々しい。でも、あくまでアコースティックな響き。実験的な香りがプンプン。ヴォーカルは合唱風なのが耳に残る。
2曲目「Citadel」。
ここからロック・サウンドに。ちょっとダラけた感じがサイケデリック。
3曲目「In Another Land」。
ヴォーカルはビル・ワイマンらしい。ビートルズで言えばリンゴみたいな役回りなのか。
4曲目「2000Man」。
これはシンプルな演奏のカントリーなのかと思いきや、途中でテンポがガラッと変わる組曲形式になってる。サイケとカントリーの融合。
5曲目「Sing This All Together」。
1曲目と同じタイトルだけど違う曲。イントロはメロトロンで不思議に始まったかと思えば、アバンギャルドな展開。わけのわからない演奏。しかも長いし。このアルバムが不評なのはこれが原因か?と思ってしまう。終盤になってやっとミックのヴォーカルが聴こえてきてホッとする。
6曲目「She's A Rainbow」。
これはベスト盤にも入っているので有名。美しいピアノのフレーズにドラムとアコギが入ってくる瞬間はやはり素晴らしい。メロディもわかりやすくキャッチーで。
7曲目「The Lantern」。
意外と真面目にメロディやコーラスを聴かせてくれる。ギターの音はさりげないけど、やっぱりサイケ。
8曲目「Gomper」。
『Sgt.Pepper's』にあったジョージのインド音楽に対抗してるのがこの曲だろうね。ストーンズの方がポップな気がするのが面白い。
9曲目「2000 Light Years From Home」。
この曲は大好き。幻想的で妖しくフワフワしていて、メロディも耳馴染みがいい。この曲が聴けるだけでも、このアルバムの価値はあると思う。
10曲目「On With The Show」。
ラストは混沌とした感じ。ミックのヴォーカル・パートも中途半端。ビートルズのようには上手くアルバムを締めくくれなかった感じが出ちゃってる。
サイケとは、こういうものだろうかと、試行錯誤しながら作った...というか「作ってみた」って感じ。結局ストーンズにもサイケってよくわかんなかったんじゃないのかなあ。次作であっさり方向転換するしね。
でも、そんな失敗作のサイケ盤、僕は決して嫌いじゃない。
聴くのが苦痛な曲もたしかにあるけど、普通に好きな曲もちゃんとあるし。長い5曲目の「Sing This All Together」を外して、シングルの「We Love You」が入ってたら、もうちょっと完成度が上がって、評価も違ってたかもしれないのに。
ストーンズがサイケに挑戦した事は間違いではなかったと思う。
↑ 「2000 Light Years From Home」。
この曲は大好き。幻想的で妖しくフワフワしていて、メロディも耳馴染みがいい。この曲が聴けるだけでも、このアルバムの価値はあると思う。