79年にリリースしたアルバム。
トリオ・レコードに移籍して2年で4枚のアルバムを発表したムッシュ。創作意欲旺盛ともとれるが、きつい契約だったなあ、とも思う。
バラエティ豊かで集大成的だった前作から一転、またもやAOR路線に回帰したアルバム。そういう時代だったのかも。
パイナップルの彼方=南の島、のイメージ通り、ハワイでのレコーディングらしく、夏をテーマにしたトロピカルなサウンドが展開する。
1曲目「Do You Wanna Ride」。
イントロのアコギのストロークからして夏の風を感じる。ゆったりとリラックス。
2曲目「No No Boy」。
スパイダース時代の名曲のセルフ・リメイク。イントロのサックスの音からして大人なイメージへと生まれ変わった。
3曲目「Gentle Wind」。
インスト。ついうっとり、ぼんやり聴いてると終わってしまう。
4曲目「Summer Love Again」。
シングルB面で隠れた名曲でもあったこの曲をセルフ・リメイク。このアルバムのコンセプトにかっちりとハマッた。原曲よりもゆったりとした感じ。
5曲目「Island Girl」。
ちょっとジャズ・テイストもあるこの曲、間奏(というかサビ?)のスキャットがなかなか小粋な感じ。
6曲目「Sun Bird」。
ムッシュのアコギの弾き語りにエレピのフレーズが混じったような小品。落ち着く。
7曲目「Empty Shore」。
このアルバムのベスト・トラック。サンバのリズム。サンバと言うとお祭り騒ぎというイメージだが、この曲は決して派手ではない。奥ゆかしさ、さりげなさがある。故に切なさが感じられていて素晴らしい。なるほど、南佳孝の曲に通じるものがある。
8曲目「George’s Blues」。
タイトルはブルースと付いてるけれど、これは思い切りロックンロール。このアルバム中、一番元気。
9曲目「Saimin 95¢」。
夏の浜辺で昼寝をしていたら、変な夢を見てしまったという感じの曲。メロディは古き日本のもののようにも聴こえるが、お経のような催眠効果もある。ヘンテコで不可思議。
10曲目「Up In The Pineapple」。
これはサイケを通り越してアバンギャルドだ。混沌とした実験曲。遊び心に溢れたムッシュはすんなりアルバムを終わらせない。
11曲目「Summer Girl」。
ムッシュの夏の歌と言ったらコレなスパイダース時代の名曲のセルフ・リメイク。とは言っても歌メロはほとんどなく、コーラスのみ、後半は波の音。いいバカンスを過ごしたなという気になれるアルバムの締めくくりだ。
これはリゾートという言葉がピッタリなアルバムで、コンセプト・アルバムと言っていいほど、統一感がある。
南の島でハンモックに揺られながら、夏の風を感じている雰囲気を味わえる。
ムッシュは以前も『ウォーク・アゲイン』というAORアルバムを作ったけれど、曲作りにほとんど関わらなかったそれに比べ、今作はきっちりとムッシュが作曲してるし、内容もずっといい。ムッシュのAOR期の傑作だ。