10年リリース。オリジナル版は80年リリースの7thアルバム。
この『Double Fantasy』の新装版がリリースされた事は当時はまったく知らなかった。後になって、あれ?いつのまにかジャケット変わったの?くらいで。
でもどうせ、ヴォーカルと楽器のバランスをちょっといじったくらいのリミックスなんでしょ、と全く興味を持てないでいた。
しかし今年も12月になったら、ジョンの事を取り上げているブログがたくさんあって、その中で「この『Stripped Down』はアリだ!」という記事を見つけて、へえ~と思いながら試しに試聴してみると、たしかに、なんか違うぞこれ、と途端に興味が湧いてきて、慌ててレンタルしてきた。
1曲目「Starting Over」。
鐘の音がなくセリフから入る。ジョンのヴォーカルも今までより生々しく、女性コーラスなどが入ってない。演奏も力強さが増して聴こえていて驚いた。後半のヴォーカルは完全に別テイクで、スキャットが入っている。最後もフェードアウトじゃなく、ちゃんとエンディングがあるのも嬉しい。1曲目からしてこの違い。やはりオリジナル版とは別モノ。聴いてみて良かった。
2曲目「Kiss Kiss Kiss」。
「ねえ あなた 抱いて もっと」というヨーコの喘ぎ声の連発に、日本人は恥ずかしくて大音量では聴けないだろうな。言葉がわからない外国人は割と自然に聴けるのだろうけど。でも僕は、そんなヨーコのぶっとび加減にすごいやられた。カッコいいと思った。断然支持する。
3曲目「Cleanup Time」。
これも冒頭からジョンの歌い方が違う。メロウなAメロに力の入ったサビのヴォーカル。ハネた感じのリズムの刻み方が心地良くて好きな曲。
4曲目「Give Me Something」。
ギター・ソロがカッコいい。ここでもヨーコが攻めてる。
5曲目「I’m Losing You」。
ここでは新しくギターがやや歪んだリズムを刻んでる。不安を表現した曲で大好き。終盤また明らかに違う歌い回し。
6曲目「I’m Moving On」。
オリジナルでは前曲からメドレー形式になってて、その繋がり具合が見事で痺れるんだけど、ここでは前曲とは分断されてた。でもやはり前曲とは2つで1つの曲という気がする。
7曲目「Beautiful Boy」。
ヴォーカルが前面に出て、まさしく耳元で歌っている子守唄の様。不安を取り除く歌。
8曲目「Watching The Wheels」。
ジョンとヨーコの曲が交互に続いてきたのに、ここからB面という事で1曲目はまたジョンの曲。どうせなら完全に交互にすれば良かったのになあと思う。CDだとなおさらそのコンセプトの崩れ具合が気になる。
これは一見地味なんだけど、サビではポップな展開で、優しく物事を見守る、成り行き任せ的な雰囲気が魅力。
9曲目「Yes I’m Your Angel」。
ヨーコにしてはオーソドックスなミュージカル風。ジョンとヨーコの優雅なダンスが目に浮かぶ。
10曲目「Woman」。
アコギの音がよく目立つ様になった。まるで数日後にライヴが控えてて、そのリハでも聴いている感じのライヴ感。
11曲目「Beautiful Boys」。
イントロは日本の演歌みたいになった。そのためかちょっとドロドロした感じのヨーコのヴォーカル。
12曲目「Dear Yoko」。
リラックスした、すごく楽観的な様子の曲で、ヨーコへの信頼感に溢れている。なにかにつけてヨーコ、ヨーコと言うジョンが微笑ましい。
13曲目「Every Man Has A Woman Who Loves Him」。
オリジナルのノリのいい感じが好きな曲だったけれど、ここではドラムなしで浮遊感あふれる不思議な味わいの演奏になっている。小気味いいロックがバラードに生まれ変わっており、全曲中、これが一番大きな変化を遂げた曲と言っていいだろう。ヨーコの曲なんだけど、オリジナルよりもジョンのヴォーカルを大きくしており、ジョンとヨーコのデュエットという感じが増している。
14曲目「Hard Times Are Over」。
オールドタイプのロッカバラードという感じで、スタンダードとも言えそうなこれをヨーコが作ったというのも驚き。ここでもジョンのヴォーカルが大きくなっていて、デュエット感が増している。
まずこのアルバム、ジョンの曲が素晴らしいのはもちろんだけど、ヨーコの曲も素晴らしいという事を声を大にして言いたい。評論家はもちろん、ジョンのファンという人でも、ヨーコの曲を飛ばして聴く、という人が多すぎる。
ジョンはヨーコの曲を絶賛してたという。たしかにこのアルバムのヨーコの曲は、どれもメロディがちゃんとしていて、ジョンが作ったの?と思う程いいメロディを書いている。
しかも、サウンドは非常にパンクでニューウェーヴ的。ジョンの曲よりもずっと攻撃的で刺激に満ち溢れている。
ヨーコの才能は過小評価されすぎ。あのジョンが認めてるんだよ?ジョンのファンならジョンの言う事聞いて、ヨーコの曲を、もっとちゃんと聴いてほしいと思う。
それにしてもこの『Stripped Down』、聴いて良かった。
こんなにいいものだとは思いもしなかったよ。
もうジョンの音源は出尽くしたろうと思ってたけど、まだこんないいものがあったのかという感じ。
余計なものを排除して、ソリッドでシンプルな演奏になって、ヴォーカルは生々しい迫力。しかもヴォーカルは別テイクが多かったみたいだし、その違いの多さに驚いた。
まるで、ジョンはまだ生きていて、もう一度このアルバムを録り直したかの様な感じだった。
聴き慣れてたアルバムも、これだけ違いがあるといい気分転換になったし、まだ聴いた事のない人は、是非聴いてみるべきだと思う。
これを聴いて、『Double Fantasy』というアルバムがますます好きになった。
ジョンとヨーコの共同作業の頂点だ。
↑ 「Starting Over」。
鐘の音がなくセリフから入る。ジョンのヴォーカルも今までより生々しく、女性コーラスなどが入ってない。演奏も力強さが増して聴こえていて驚いた。後半のヴォーカルは完全に別テイクで、スキャットが入っている。最後もフェードアウトじゃなく、ちゃんとエンディングがあるのも嬉しい。1曲目からしてこの違い。やはりオリジナル版とは別モノ。聴いてみて良かった。