陽水は90年代にハマッて、それまでのアルバムも結構集めたし、新作も買う様になった。
だけど、00年の『GOLDEN BAD』や01年の『UNITED COVER』にガッカリしちゃって、陽水はもういいかな...と、それからは買うのをやめちゃったんだよね。だから、それ以降の活動はほとんど知らず。
それから時がたって、図書館に通う様になり、図書館に陽水のアルバム『カシス』が置いてあるのに気付いた。へ~、こんなのあったのか、機会があったら借りてもいいかなくらいに思ってて...それでも1年くらい放置してた。
それが、なんとなく気が向いて、とうとう借りる事になって。いつリリースされたのかも知らないアルバムだったけど。
1曲目「イミテーション・コンプレックス」。
幻想的なオープニングから、ベース・ラインに導かれアップ・テンポに。変拍子のリズムが肩透かしの印象を抱かせクセになる。妖しい夜の激しさ。
2曲目「この世の定め」。
歯切れのいいリズムはちょっとマンボ風。どうやらこれがリード・シングルだったみたい。クールな印象も、間奏のリード・ギターが歪んでいてなかなかの激しさでカッコいい。ホーンが煽るアレンジもジワジワと盛り上がる。
3曲目「Final Love Song」。
これ、どこかで聴いた事ある...と思ったバラード。陽水がTVで披露してたのかなあとも思ったけど、どうやらCMでも使われてたみたい。冒頭の「♪星のない星空で」のメロディが印象的でずっと耳に残る。ふわふわと夜空を漂うかの様な浮遊感が大好きな曲。ただ、ちょっとヴォーカルのディレイ処理が耳障り。陽水の声は独特のエコーがかかってるんだから、わざわざこんな事をしなくても良かったのにと思った。
4曲目「テレビジョン」。
Aメロは陽水風のラップだね。そこから「♪信じる者へ真実の目」というサビのメロディもスリリングで納得。
5曲目「恋のエクスプレス」。
エクスプレスと言うけれど、それほどスピード感のあるものではなく、地を這う機関車のような趣も。
6曲目「森花処女林」。
この曲はTVドラマの挿入歌として使われてたのを知っていて、ドラマに「合ってなかった」という事を憶えていた(笑)。穏やかでシンプルなバラードでいい曲なんだけどね。なんのTVドラマだったかは憶えてなくて、この度調べてみたら『ランチの女王』だって。あー、再放送で観たんだっけ。たしかにドラマの雰囲気には合ってなかったなー。いい曲なんだけどなー。
7曲目「パンキー・ロカビリー」。
その名の通り、パンクに弾けた感じのロカビリー。ホーンが暴れまくってゴージャス。
8曲目「結局雨が降る」。
これは一転してマージー・ビート。アコギのカッティングが印象的も、煌めき感のあるリード・ギターのフレーズ、間奏のバロック調のピアノ、コーラス、エンディングなど、ビートルズ風で楽しい曲。
9曲目「You Are The Top」。
初めはピアノの弾き語りバラードかと思いきや、スゥイング・ジャズに変貌。「♪ま、そんなこと言っちゃってLove」など、とにかく「小粋な」という言葉が似合うムードが漂う。
10曲目「都会の雨」。
これも8曲目に続き雨の曲であり、9曲目に続きこれもジャズなんだけど、これはグッとやるせなく大人のムード漂う曲。こういうジャジーな曲は大好きで。悲しいピアノと、ファッファーとむせび泣くホーンが素晴らしい。
11曲目「決められたリズム」。
ラストはピアノの弾き語りバラード。落ち着いて静かだけど、どこか清々しさが漂う。この曲もヴォーカルのディレイ処理が気になるが...。気分が非常に落ち着いてきて、いいものを聴いたなあという満足感でアルバムに幕。
いやあ、とにかく驚いた。こんな素晴らしい出来のアルバムだったなんて。
全然期待せずに聴いたら、見事に裏切られた。
一度聴いただけで興奮してしまい、即座に「もう一度聴きたい」とリピート。それからも何度も聴いている。
陽水のアルバムは15枚くらい聴いてるけど、これは『LION&PELICAN』や『氷の世界』に匹敵する...いや、個人的には陽水の最高傑作なんじゃないかとも思う。
こんなアルバムを聴き逃していたなんて。
調べてみたら、リリースは02年。
なんだ、僕が陽水に見切りをつけた直後のアルバムじゃないか。もうちょっと我慢して陽水に付き合っていれば、このアルバムに早く出会えたのに。そうすれば、その後も陽水のアルバムを買い続けてた事だろうに。
そんな事もあって、このアルバムを何度も聴いているのはもちろん、他の陽水のアルバムも聴き直していて、ちょっとした陽水ブームの僕。
とにかくこの『カシス』、リリース当時もあまり話題になってなかったと思うし、そんなに売れたとも思えないけど、捨て曲なしの素晴らしいアルバム。初めから終わりまで飽きる事無く聴けて、聴いた後には「また聴きたい」と必ず思わせてくれる、お薦めのアルバムだ。