僕が音楽を聴く事を趣味としたのは85年。だから、ギリギリ、レコード文化に間に合った。その後3、4年でCDに切り替わるわけだが、その間はもちろん、レコードを買い集めた。
当時、我が家にあったレコード・プレーヤーはターン・テーブルが回らなくなっていて、自分で指で回しながら聴いていた事もあったね。回すのが遅かったり速かったりしないように、適度なスピードで回すのが結構面白かった。割と簡単だったけど、長く回しているのはやはり疲れるわけで。
それで、ターン・テーブルが回らなかった原因は、ゴムが伸びきっていて外れていた事だとわかり、ゴムを買い換えて動くようになった時の、目から鱗感!こんな単純な事が原因だったなんて、と。
中学生の頃はお金もなかったので、まず通ったのは貸しレコード屋さん。でも、うちのプレーヤーではカセットテープに録音できなかったので、友達の家や親戚の家に行って録音させてもらったりして。
最初は借りてたけど、そのうちサザンやおニャン子関連のレコードを買うようになって。貸しレコード屋さんではレンタル落ちの中古レコードも買ったね。
それから高校生になってからはビートルズのレコード集め。ビートルズの日本盤レコードをほぼ揃え終わった所で、時代はCDに...。
CDラジカセを初めて買ったのは高校2年の終わりくらいだったのかなあ。それまでもずっとレコード・プレイヤーは故障しがちだったから、カセットテープで聴く方が多かったので、あまりレコードに対して強い思い入れがなかったのも幸いしたみたいで、レコードからCDへの移行はほとんど抵抗がなかったね。
結局、買ったレコードはアルバム、シングルとも50枚ずつくらいで。ほとんどの作品をCDで買い直しちゃったので、それからはわざわざレコードを聴くという事もなく。
今でも、いろんな人の音楽系ブログを見てると、レコードに思い入れがあって、CDよりもレコードにこだわりを持って買い集めてる人が多いんだけど、僕にはそれがわからなくてね。どうしてそこまでレコードに強い思い入れを持っているのか。レコードの良さ、魅力はなんなのか。
唯一いいと思うのは、ジャケットが大きい、という事くらいかなあ。
レコードの方が深みがあって温かい音がする、とよく言われるけど、音の良さは、いいプレイヤー、再生環境を持ってないとわかんないだろうしなあ。
CDでいいじゃん、それがずっと僕の答えだった。
先日、図書館で見かけて、思わず借りてきてしまったのが、この『はじめてのレコード』という本。
能年玲奈風の女の子がレコードを掲げた、お洒落な感じのする本だった。
これは、そのタイトル通り、レコードなんて見た事も触った事もないというくらいの超初心者向けのものだから、「プレイヤーは水平に置きましょう」とか「ジャケットから盤を出す時は荒っぽくつままないように」とか「ターンテーブルには盤の穴を合わせてそっと置きましょう」とか「A面が終わったら裏返しましょう」とか、レコードの事を少しでも知っている人なら、何を今さらという事ばかりが多く載っている(笑)。
レコード・プレイヤーの紹介とか、レコードショップでのマナーとか、レコードの探し方・買い方、お手入れの仕方、レコードにまつわる素朴な疑問とか、超基本的な事が書かれている。
まあ、それでも中には僕も初めて知ったような事もあってね。
中古レコードのコンディション表記の見方とかね。VGなんて、VeryGoodだから、かなり質のいいものだと思ってたけど、実はそうでもなかったり、とか。
読んでるうちに、だんだんとその気になり、15年くらい前に1万円で買ったプレイヤーをひっぱり出してしまった。当時、気まぐれで買ってはみたものの、ミニ・コンポのスピーカーに繋いで聴いてみたら、すごく音がショボくてガッカリして、ほとんど使わずにしまってしまったんだよね。
どうやら、レコード・プレイヤーをミニ・コンポに繋ぐにはPHONO端子でないとダメらしく、普通の外部入力(AUX端子)だと、とても小さな音になってしまうとの事。これを解決するには、フォノイコライザーというものを繋いで音を調整する必要があるんだって。なるほど、それで音がショボかったのか。それは知らなかった、と。
でも、調べてみたら、フォノイコライザーは安くても5000円くらいはするみたいで、わざわざそれ買ってみても、どれくらいの音になるのかわからないので二の足を踏んでしまう。それで音が劇的に良くなるんだったら欲しいけど...。
でも、レコード・プレイヤーを買った15年前とは、繋ぐミニ・コンポも違うものなので、ちょっとは違いがあるかなと思って、試しに繋いで聴いてみたら、それなりに音量を上げれば、それほどショボい音とも思わなかった。一応、聴ける感じ。
でも、よく言われるほどの、レコード特有の深みのある温かい音というのは実感できなかったなあ。やっぱりフォノイコライザーが必要なのかとも思ったけれど、僕のプレイヤーの事をネットで調べてみたら、フォノイコライザーは内蔵してるんだって。なんだ、新しく買う必要はないんじゃん。じゃあ、この音質が限界なのか。
それから、なんだか、曲のテンポがCDで聴くよりも若干速い気がして違和感があるんだよね。回転するスピードがプレイヤーによって違うのだろうか。同じ曲でもCDとは違う感じがするのがちょっと気持ち悪い。
レコード、すごくいい!とは思えなかった。
だけど、せっかくだから、もうしばらくはレコードを聴いてみる事にしよう。
「CDでいいじゃん」という僕の結論は変わらないけれど、レコードを聴くというのは気分もちょっと違うし、手持ちのレコードを一通り聴き直してみるのもいいかもしれない。
それにしても、いいタイトルだよね。『はじめてのレコード』。
昔に比べたら、衰退してしまった文化だけど、それでもそれなりの良さがあって、絶滅する事無く、少しずつ活気を取り戻している。
古き良きものを見直そう、若い人にもその良さをわかってほしいとの思いで作られた『はじめてのレコード』。
とても愛おしい気分になる一冊。