前田敦子が、二股だの不倫だのをやる主人公を演じるという事で観たドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』を観て、その主題歌「Selfish」が、ドラマの内容に合っていてすごく気に入った。このドラマは深夜枠にしては高視聴率という事で話題になってたが、個人的にはそれほど面白くなかった(笑)。でも、この主題歌が良くて、なんとなく最終回まで観てしまった。
この「Selfish」、すごくいい曲だから、Mステとか、TVで歌ってくれないかなあと期待してたんだけど、そんな機会は結局なかった様に思う。
その「Selfish」は、シングルとして売られない代わりに、前田敦子初のアルバムのリード曲となったのだった。
そうか、アルバムかあ。
アルバム派の僕としては朗報。
あっちゃんのアルバムを購入するだなんて、今まで頭の片隅にもなかったんだけれど、そう言えば、あっちゃんのシングルは、「君は僕だ」とか「タイムマシンなんていらない」とか、結構いい感じのやつがあったなあ、と思い、これは買ってみてもいいかも、と思った。
だけど、よくよく考えてみると、アルバム買う程、僕は前田敦子ファンか?と否定的になり、最近の資金不足もあって、これは、まあ、レンタルですませればいいか、と結論付けたのだった。
そして、レンタル開始当日にTSUTAYAに行ってみると、入荷は1枚のみで、既に貸出し中。これは仕方ないなという事で、それから毎日通ったのだけれど、いつも貸出し中。我慢しきれなくて、電話で問い合わせてみると、借りた人が返却日を過ぎても延滞してるとの事で。これはいつになったら戻ってくるのやらと。
どうしたもんかと思っていたら、なんと、Amazon経由で、新品が1400円で買える事が判明。
そうか、1400円か。3000円以上では躊躇してしまったけど、この値段で買えてしまうなら。レンタル料に1000円上乗せするだけで、自分のものにする事ができる。
これなら、という事で作戦変更。レンタルから購入へと踏み切ったのだった。
今までの4枚のシングル曲をすべて収録した1stアルバム。
ていうか、最後にリリースしたシングルから、もう2年もたってたのか。もっと最近までずっと歌手活動してたイメージだったけど。
でも、たしかに、今さら1stアルバムなの?と驚いた感はある。
僕が買ったのは、DVDの付いてないType D。
16年リリース。
1曲目「Selfish」。
なんと言ってもこの曲の存在感。絶望感すら感じる、前田敦子の歌手としての新境地。アルバムのキャッチ・コピーが「サヨナラ、理性」となっているのは、この曲があるからだろう。マイナー調のコード進行とメロディが大好き。カッコいい。前田敦子の「いい女度」が増す。こういう女性に魅力を感じるか、それとも、近づかない方が賢明だと判断するかはあなた次第だ。
2曲目「わがままなバカンス」。
この2曲目が、タイプ別に分かれた新曲みたい。わがままを言う曲らしいけど、やや穏やかに歌われている。Bメロの「♪無理して来てよかった」の件の、フッと落ちるコード進行が好き。Type Dにしか入ってないこの曲。Type Dを買って良かったと充分満足させられた。
3曲目「タイムマシンなんていらない」。
これはシングルで聴いた時からいい感じだなと思ってた。「♪Beep beep beep beep yeah」は、ノリが良くて、思わず一緒に口ずさんでしまう。歯切れの良い感じのサウンドが、爽やかさを煽る。元気になれる1曲。
4曲目「Sunday drive」。
これは、深夜やってたAKBのドライヴ番組で使われてたのを憶えてる。シャッフルのリズムは、ドライヴのリズムとはちょっと違うかなーとは思うんだけどね。どっちかと言うと散歩したくなる。
5曲目「セブンスコード」。
オープニングから、ギターの刻むリズムが印象的なロック・チューン。音楽的には無知なので、実際にこの曲にセブンスコードが使われているのかわからないけど。爽やかさのある疾走感で、ドライヴ感もばっちり。ベースのグルーヴ感もいいし、間奏のブレイクには気合も入るしで、ライヴで盛り上がりそう。
6曲目「冷たい炎」。
ややジャズっぽい進行で、お洒落な曲かと思いきや、ブラス・セクションが派手な装飾を付けている。これはこれでいいけど、しっとりとアコースティックなアレンジもいいのではないかと思う。
7曲目「コンタクトレンズ」。
イントロのギター・リフとか、My Little Loverを髣髴とさせるなあ。つまりは、そういう懐かしさを持ったアレンジの曲。
8曲目「壊れたシグナル」。
これは切ないというか、冒頭の歌い方でもわかるように、前田敦子は抑えた感じで歌うと、悲しみとか絶望感が生まれる。しかし、聴き進めてみると、ちゃんとサビ終わりには希望を感じる、という。
9曲目「I’m free」。
彼氏と別れて、フリーになったという曲。「私は自由だ!」と高らかに自由を謳歌しているのではなく、じわじわと、「私は何をやってもいい、自由なんだな」と、小さな幸せに浸っている感じ。
10曲目「懐かしい初めて」。
初めてのはずなのに懐かしいという、矛盾はするんだけれども、よく感じる事のある感情。これはどうやら、失恋した後の話らしいけど、前田敦子が優しく歌っているので、悲しい感じはしない。
11曲目「Flower」。
AKB在籍時にリリースされた、ソロ・デビュー曲。基本的に僕はバラードが苦手なので、この曲にも当時からピンとくるものはなかった。でも、こうしてアルバムの流れで聴いてると、これはこれで悪くはないのかなと思うけれど。
12曲目「頬杖とカフェ・マキアート」。
引き続き、これもバラード。でも、ドラマチックに展開されるので、平坦な「Flower」よりは好きだな。
13曲目「君は僕だ」。
このシングルも、颯爽と走り出したくなる、思わずウキウキしてしまうような爽快な曲だ。決して派手ではないけれど、素晴らしい曲。でも、強いて言えば、前田敦子らしくない感じはする。前田敦子のイメージとちょっと違う気がしなくもない。でも、そうやってイメージを壊していく事も大切な事なんだろうね。うん、いい曲だ。
14曲目「風のアコーディオン」。
ゆらゆらと風に揺られる「アコーディオン・カーテン」をイメージする。肩の力を抜いた、さりげない1曲。アルバムのラスト前という位置も見事にハマッている気がする。たぶん、この曲のサウンドにアコーディオンは使われてないと思う。
15曲目「右肩」。
このバラードは聴いた事あった。たしか、前田敦子がAKBを卒業する時にライヴで歌ってたように記憶してるのだけど、どうだったろうか。そんな、僕の中では卒業のイメージがあるこの曲が、アルバムのラストに使われている理由とは。
「Selfish」以外は、既にシングルで発表済みの曲ばかりで驚いた。
これって、今までシングル買い続けたファンにとってはどうなの?と思う。新曲は、3種のタイプ別に1曲ずつ分けての収録みたい。新曲を聴きたいなら全タイプ買いなさいという姿勢のレコード会社にも腹が立つ。基本的なアルバムの作りとしては手抜き感一杯だし、売り上げにも響くだろうなあ。
初めに、通して聴いた時の感想は、「特にあっちゃんファンでもなかったのに買うなんて、ちょっと焦ったかなあ」という感じだった。レンタルでもよかったかも、と。
だけど、聴き続けているうちに、かなり馴染んできて、すぐに好きな曲が増えていってね。
「あっちゃん、いいよ!」と思わず叫んでしまっていた。
これらの曲が中心になるなら、ライヴにも行ってみたいなと思わせられた。
既発曲の寄せ集めのアルバムだけど、いい曲ばかりだったし、あっちゃんて、いい曲いっぱい歌ってたんだな、と認識させられた1枚。
かなり気に入って、何度も聴いている。
前田敦子のイメージは、「一見、清純そうなんだけれど、実は深い闇を抱えた女の子」。
これはAKB時代から感じていた事だけれど、女優として様々な役をやる中で、増々その思いは深くなっていった。
このアルバムでは、そんな「闇」の部分がはっきりと見えるのは、「Selfish」くらいかもしれない。その他の曲のほとんどは、爽やかさの方が強い。
このアルバムの出来にはかなり満足はしているのだけれど、僕としては、もっと「闇」の部分を出してほしかったと思う。その方が、前田敦子の魅力を際立たせる事ができたと思うからだ。
でもまあ、そんな些細な事は置いといて、いい曲いっぱいあるから、前田敦子が嫌いでなければ、是非聴いてみるといいよ、とおススメしたいアルバムだ。
↑ 「Selfish」。
なんと言ってもこの曲の存在感。絶望感すら感じる、前田敦子の歌手としての新境地。アルバムのキャッチ・コピーが「サヨナラ、理性」となっているのは、この曲があるからだろう。マイナー調のコード進行とメロディが大好き。カッコいい。前田敦子の「いい女度」が増す。こういう女性に魅力を感じるか、それとも、近づかない方が賢明だと判断するかはあなた次第だ。