僕のブログを覗きに来る様な方は、『レコスケくん』の事は当然知ってらっしゃると思います。
『レコスケくん』は、『レコード・コレクターズ』連載時から大好きで、01年に出た単行本はもちろん買いました。
連載終了後も、『レココレ』でビートルズ特集なんかを組む時は単発で復活したりしていて、いつかそれらをまとめた第2巻が出るのを心待ちにしておりました。
しかし、07年に出たのは第2巻ではなく、前回の単行本に、その後書かれた原稿をボーナス・トラック的に追加した『COMPLETE EDITION』なる体裁でした。
これには僕、ガッカリしちゃいましてね。
これを買うと、前回買ったものがほとんど無駄になってしまう様に思えたし、追加されるエピソードも、『レココレ』などで読んであったし、なにしろ、前回1000円という非常に安かったイメージのあった値段が、少しページを足しただけで1500円になってしまったという事もマイナス・イメージで。
結局、この『COMPLETE EDITION』は買わなかったのです。
だけど、時がたつにつれて、やっぱり買っておくべきだったかなあ、という思いは強くなって。でも、今さら買うのか?という気持ちのせめぎあいで。
1500円も出すのは躊躇するけれど、中古で安く手に入るなら欲しいなあ、と思い、いつもBOOK OFFなんかに行った時は、必ずチェックしてたりしたのですが、それほど多く出回るような本ではないし、手に入れたらずっと宝物の様に大事に手元に置いておきたくなる、音楽好きのバイブルの様な本なので、きっと誰も売りに出したくなる代物ではないんだろうなと想像し、こんな田舎町では、やっぱり中古で安く出回る事はありませんでした。
そうこうしているうちに、その『COMPLETE EDITION』からも月日がたってしまったし、その後もちょくちょく『レコスケくん』は書かれているので、今後どうなるのだろうと思ってました。
前回『COMPLETE』なんて銘打っちゃったから、次に出す形が想像できません。
でも、大好きな『レコスケくん』、なんとかいい形で単行本にしてほしい。
僕が持っている本の続きをまとめたものが欲しい。
ずっと、そう思っていました。
そんな折の今年11月下旬、著者の本秀康さんがTwitterで、『レコスケくん』の新刊が出る事をつぶやかれました。
マジで?
ついに!?
僕は飛び上がる思いでした。しかも、12月発売との事で、あと1ヶ月とかからずに出るというではないですか。
長い間念願だった、『レコスケくん』の新刊。こんな嬉しい事はない、と大喜びだったのですが、その後、毎日ネットで情報を探してみても、『レコスケくん』の新刊リリースのニュースはみつからないし、当然Amazonでも予約受付始まらないしで。
Twitterで見たものは、幻だったのではなかろうか?なにかの勘違いだったのか?ものすごく不安になっていきました。
しかし、そんな日が10日か2週間くらい続いての12月初旬、ようやく、Amazonにて、予約受付が開始されました。
各方面で、新刊リリースのニュースも正式発表されました。
発売は12月19日。
良かったあ、ちゃんと出るんだあ。
収録内容の詳細を見ると、『COMPLETE EDITION』の内容に、さらにその後書かれた原稿を追加したというもの。第2巻でも第3巻でもなく、初回本にボーナス・トラックをどんどん追加していくというやり方で、既に持っているものと内容が多くダブってはいるのですが、それはもうどうでも良くなっていて、初回本が138ページだったものが、今回は280ページになっているそうで、値段は2000円。ページ数も値段も同じ2倍、という事にも非常に納得で、これはもう何が何でも買うしかない、と。
たぶん、僕の地元の小さな本屋さんでは、このような本は入荷しないだろうから、Amazonで買うしかありません。
しかし、すぐには予約しませんでした。
その時点では、Amazonのポイントが付いてなかった、というセコイ理由からです(笑)。
Amazonの他の商品をチェックすると、本には3%分くらいのポイントが付いている事が多く、予約開始時点ではポイントの付与がなかったとしても、何日かたつと、ポイントが付く事があるのは経験上わかっているので、そこに期待して、すぐには予約をしませんでした。
3%のポイントが付くとしたら、60円分のポイントが付く事になります。僅かな金額ではありますが、普段そうやってコツコツとポイントを貯めている身とあっては、バカにはできません。ポイントなしで予約を入れた後、数日たったらポイントが付いた!なんて事になったら損した気分になるので(一旦キャンセルして、予約し直す手もありますが、結構めんどくさい)、ポイントが付くまでギリギリまで粘ろうかと。
しかし、そんなセコイ行動が、後になって大きく響いて来るとは、この時は思いもしませんでした。
ポイントが付く事を期待して、何日も予約を延ばし延ばしにしていたのですが、あまり悠長にもしていられなくなりました。
発売日が近づいてきたためです。
発売1週間前になったら、ポイント付かなくても予約を入れよう、とラインを決め、その時を待ちました。
そして結局、1週間前になってもポイントが付く事はなかったのですが、もう待ってられないので、仕方なく予約を入れる事にしました。
この時点で、発売日が12月20日にシレッと延期になっていました。
たった1日ですが、ずーっとその日を待っていたので、「さらに1日待たなければならないのか」と、落胆する気持ちになりました。
新刊リリースという本秀康さんのつぶやきを読んだ時から、12月最大の楽しみとして、その日を待ちわびて過ごしてきました。
途中、素晴らしい表紙の発表がありました。なんて素敵な表紙なのだろう。
期待は大きく大きく膨らみました。
ホント、待ち遠しかった。
20日の発売を前にした週末の、16日頃には、都内では既に店頭に並んでいる、という情報も入ってきました。
羨ましい。
僕の手にはいつ届くんだろう。
僕はAmazonのプライム会員になったばかりだから、予約した商品が、どれくらい迅速に送られてくるのか、経験した事がありません。もしかしたら、発売日前日には届いてしまうのではないか?、少なくとも発売日には届くかな、それとも発売日に発送なので届くのは翌日になってしまうのか、など。
その日を待ちわびました。
そして迎えた発売日。
朝早くに、Amazonの商品情報をチェックしてみると、【在庫あり】になると思っていたものが、【3~6週間以内に発送します】になっているではありませんか!
これは、現時点では在庫がないという事を意味します。
品切れ!?
僕の分は!?
慌ててメールをチェックしたのですが、Amazonから、発送しましたとのメールは届いてません。
僕の分もないの?ちゃんと予約したのに??
焦りました。
ふざけないでよ、この日を待ちわびてきたのに、発売日に手に入らないなんて。3~6週間待ち?来年になっちゃうじゃないかっ。
こんな事なら、たった60円分のポイントなんてセコイものを待たずに、さっさと予約しておくんだった。予約するのが遅くなった分、僕の分まで品数確保できなかったという事か...。
【予約受付中】の文字を見て、それは発売日前までに予約しておけば、発売日には手に入るという意味だと思い込んでおりました。
発売日に確保できる数以上の予約を受け付けないでよ、と思いました。
いや、ちょっと違うか。
予約を受け付ける以上、その数をちゃんと発売日には確保してよ、と。
しかし、困った事になりました。
まさか、予約したのに、僕の分は確保できてないなんて。
あんなに楽しみにしてたのに、手に入らないなんて。
しかも、手に入るのは来年??もしかして増刷待ち?そもそも、ちゃんと手に入るの?
ゾゾ~ッと、背筋が寒くなりました。
なんとかしないと。
この日は運良く仕事は休みだったので、朝イチで、地元の本屋さんを回る事にしました。
小さい本屋さんなので、可能性は低いのですが、普段『レココレ』を置いてあるので、その流れで入荷してくれないかな、と。
かすかな期待を持って行ってみたのですが、やはり2軒ともありませんでした。
やはり、Amazonから送られてくるのを待つしかないのだろうか。
品切れ状態にはなっているけれど、ちゃんと僕の分は確保してあって、発送に手間取っているだけで、今日の夕方にでも発送メールが送られてくるんじゃないか、と想像してみたり。
【3~6週間以内に発送】と表記されていても、数日で入荷する事は多々あるので、きっと、それほど待たずにすむのではないか、と期待してみたり。
でも、いつ手に入るのか全く先が読めない、というのは非常に不安で、こんな状態でこれから何日も過ごさねばならないのかと思うと、憂鬱でなりませんでした。
なので、とりあえず、隣町のショッピングモールにちょっと大きめの本屋さんがあるので、そこに行ってみる事にしました。
でも、大きめの本屋さんとはいえ、マニアックな音楽マンガなんて、入荷してくれるものだろうか。あまり良い想像がつきません。
そう思いながら、Twitterをチェックしていると、TOWER RECORDSのアカウントで、「レコスケくん入荷しました」というつぶやきがあるのを見つけました。いいなあ、東京なら簡単に手に入りそうで...と一瞬思ったのですが、ふと、TOWER RECORDS、そうか、音楽関係の本ならば、CDショップにも入荷する事がある事に気付きました。
これから行こうとしているショッピングモールには、HMVがあるのです。
本屋さんよりも、HMVの方が、置いてある可能性が高いのではないか?
期待が膨らみました。
夜になって、まだAmazonから発送メールが送られてきてないのを確認してから、HMVへと足を運びました。
HMVと言っても、片田舎の小さなHMVだから、はたしてあるものかどうか...。
期待と不安で一杯になりながら到着してみると、ありました、『レコスケくん』新刊2冊入荷済み!
良かったあ、これで無事手に入る...。
ひとまず安心したものの、これで終わりではありません。
Amazonへ予約した分をキャンセルしなければなりません。
以前、キャンセルのタイミングが僅かに遅くて商品が発送されてしまい、キャンセル不可で余計な出費をする羽目になった事があるからです。
HMVで『レコスケくん』をGETして、急いで家へ帰ります。
僕はスマホを持ってないので、外出先でキャンセル処理をする事ができないのです。家に帰ってパソコン立ち上げてやらないと。
もし、Amazonから発送されちゃってたらどうしよう、とドキドキしながら家へ戻ってきたのですが、大丈夫でした。間に合いました。
落ちついてキャンセル処理をして、これで無事終了、一安心です。
ホントはキャンセルなんてしたくなかったのですが、発売日に品物を確保できなかったAmazonが悪いのです。僕のせいじゃありません(笑)。
これで、やっと、念願の『レコスケくん』を手に入れる事ができました。
長かった。
焦った。
辛かった。
良かった。
なんと言っても今回の『レコスケくん』、表紙が素晴らしいです。
表紙と言うより、【ジャケット】と呼びたいです。
それだけ、芸術的にも価値がある、素晴らしいものです。
以前のモノクロの表紙も、味わいはあったのですが、今回のコレを見てしまうと、差は歴然です。
可愛いレコスケくんがレコード屋さんで微笑む姿。
後ろ姿のレコガール。
そして、描かれているアルバムの数々。
ビートルズの『ラバー・ソウル』『ハード・デイズ・ナイト(英)(米)』『アビイ・ロード』、
ポール・マッカートニーの『ラム』『スピード・オブ・サウンド』『タッグ・オブ・ウォー』、
ジョージ・ハリスンの『不思議の壁』、
ボブ・ディランの『追憶のハイウェイ61』、
E.L.O.の『バランス・オブ・パワー』、
デレク&ザ・ドミノスの『いとしのレイラ』、
キング・クリムゾン』の『クリムゾン・キングの宮殿』、
ザ・フーの『トミー』、
ピンク・フロイドの『原子心母』、
ローリング・ストーンズの『レット・イット・ブリード』、
トッド・ラングレンの『サムシング/エニシング』、
オールマン・ブラザーズ・バンドの『ブラザーズ&シスターズ』、
他にも、ザ・バンドやジェシ・エド・デイヴィスとか、ほとんどすべて僕の好きなアーティストのアルバムが描かれています。
これはもう、何時間でも眺めていられるし、幸せな気持ちになれる、素晴らしい【ジャケット】です。
で、以前の単行本との違いを調べてみると、初回本が138ページ。
で、それに新しく72ページ追加した『COMPLETE EDITION』が200ページ。
で、さらに94ページ追加した『20th Anniversary Edition』が280ページ、という事になっています。
でも、よく数えてみればお気付きの様に、追加したページ数と合計のページ数の計算が合いません。
それは何故かと言うと、「削除されたページ」があるからです。
僕が持っている初回本を見てみると、最後の方に収録されてた「松田聖子の話」や「椎名林檎の話」や「ブリリアント・グリーンの話」や「ボブ・ディランの話」等が、『COMPLETE EDITION』以降の本には載ってません。これらのエピソードにはレコスケくんが登場しないので、レコスケくんの話ではないとして削除されたのだと思います。
それから『COMPLETE EDITION』は僕は持ってないので、詳しくはわかりませんが、やはり削除になったエピソードがあります。
ネットで確認できる『COMPLETE EDITION』の目次を見てみると、正式に雑誌に載る前に書いた原稿が、「アーリーテイク」や「アウトテイク」として載っていたようです。それらは、今回の『20th Anniversary Edition』では削除されています。
「ディス・タウン」というエピソードも見当たりません。どんな話だったのか気になります。ディス・タウン...もしや、コステロ絡みの話では??
とにかく、削除されているエピソードがあるわけですから、初回本や『COMPLETE EDITION』などの以前の本にも価値があるわけでして、手放すわけにはいかないという事です。
僕もやっぱり、『COMPLETE EDITION』が安く売られているのを探す事はやめてはいけないようです。
まあ、そんなこんなでの盛り沢山な内容になった今回の『20th Anniversary Edition』、最初はそのつもりはなかったのですが、読み始めたら、一気に読んでしまいました。
ものすごいボリュームなので、少しずつ楽しもうかと思ったのですが、止まらずに、一気読みです。
5時間もかかりました。
既に何度も読んだ事ある内容でもやはり面白かったし、今回初めて目にしたエピソードも結構あって、さすがに読み応えがありました。
『レコスケくん』読むならコレとばかりに、iPodでジョージ・ハリスンやポール・マッカートニーを聴きながら読んだのですが、ちょうど読み終わる頃にポール・マッカートニーの「Once Upon A Long Ago」が流れていて、泣きそうになりました。ああ、読み終わっちゃう、と。
Amazonの以前のレビューなんかを読むと、『私はビートルズやジョージ・ハリスンのファンではないので、レコスケくんの気持ちがわからないし、内容もわからない』などとのコメントを書いて低評価を付けている人が何人かいたのだけれど、そうか、ビートルズの良さがわからない可哀想な人もいるんだなあ、と。ていうか、ビートルズ・ファンでもない人が、よく『レコスケくん』を買って読む気になったなあと不思議で。【レコード好き】という事だけで読む気になったのだろうか。ビートルズに興味がなければ、このマンガの面白さが充分伝わらないのは当たり前なのだが....。
『レコスケくん』は、その名の通り、レコード好きの男の子の話だけれど、別にレコードじゃないとダメってわけじゃなくてレコスケくん自身よくCDも買っているので、音楽好きな人、特にビートルズ界隈好きの人にはきっと気に入っていただけるはずのマンガだ。
【女の子よりもレコードを選んでしまう青春】がコンセプトとしてあるけれど、ちゃんと可愛い女の子も登場して、音楽の話だけにとどまらない所もいい。
レコガールとの曖昧な関係が微笑ましく、今で言う所の【ムズキュン】シーンもあったりして良かったのだけれど、今回読んでみたら、レコガールが「レコスケの彼女」とハッキリ書いてあった所があったのが衝撃的だった。
そうなの?正式な恋人同士だったの??
レコスケくんとレコガールは、あの微妙な距離感がモヤモヤして良かったのにぃ、と思う気持ちもあるのだけれど、作者自身、レコガールについては、ポール・マッカートニーの生粋のファンとして描いているかと思えば、「あまりポールには興味ないし」発言もさせちゃったりもして、設定そのものが曖昧なので、レコスケくんとの関係も、やっぱり曖昧なのではないかと思います。
それにしても、レコガールみたいな女の子、現実にいるのだろうか。
僕も、レコガールに出会いたかったなあ。
ともかく、今までのレコスケくんがすべて詰まってると言ってもいい、さすがの『20th Anniversary Edition』。
そうか、レコスケくんが生まれてから20年もたっているのか。
僕が手に入れた単行本の発売からしても、既に15年もたっていた事には気付きませんでした。
しかも、これからもレコスケくんは続くと思います。
近い所で言えば、ポールの『フラワーズ・イン・ザ・ダート』がリイシューされる時に、きっとまた『レココレ』に登場する事でしょう。
それらが今度また単行本にまとめられるのはいったいいつ、どんな形でしょうか。楽しみでなりません。
レコード好きに限らず、音楽好き、ビートルズ好きの人にはマスト・アイテムと言える、是非とも読んでほしい『レコスケくん』です。