[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2001年頃に書いた記事です
『ラム』発表後、ポールはついにバンドを結成。ソロとしてではなく、バンドとして活動していく事を決めた。そのポールの新バンド・ウイングスの1stアルバムが本作だ。
ポールは、スタートを「あっさり」切るのが好きだ。力を入れて、万全の体勢が整ってから...というのは好まないらしい(笑)。
1stソロの時もそうだった。そしてまたこの新バンドのスタートも。
出来立てのバンドの1stアルバムのレコーディングに費やしたのは僅か3日間。
当然ほとんどの曲が一発録り。
編集も約2週間。
深く考えず。作りこまず。サッと走り出そう...このフットワークの軽さがポールの長所でもあり、短所(だから批判の対象にもなる)でもある(笑)。
そんな訳で、当然このアルバムもラフな印象はある。
まだその方向性を模索しているような、手探り感も否めない。
派手さもなく、これといった代表曲・ヒット曲が含まれている訳でもないので、ファンにとっても地味な印象があるアルバムではないか。
しかし、バンド編成という事で、ポールが「一人で責任を負わねばならない」プレッシャーからは解放されて、どことなく楽しんでいる姿も目に浮かぶ。
僕も、初めは確かにあまり興味をそそられるようなアルバムではなかったけれど、何度か聴くうちに、悪くないじゃん、と思えるようになった。
歌詞もいい加減なまま(?)の「マンボ」でスタート。
軽快なロックで、サビの「♪ フー」というコーラスがクセになる。
「ビップ・ボップ」ではポールのヴォーカルの回転数を変えてある。
ポールは曲に合わせて「自ら」声色を変化させて歌うのが得意なので、このようにテープ・スピードを操作するというのは珍しい。
リラックスした雰囲気のカヴァー曲「ラヴ・イズ・ストレンジ」の後、
動物保護をテーマにしたタイトル曲「ワイルド・ライフ」ではグッとヘヴィに。
前半のハイライトで、6分を超す大作。
実験的な(?)曲が並んだA面に比べ、B面はポールらしい、穏やかで綺麗なメロディの曲が並ぶ。
「サム・ピープル・ネヴァー・ノウ」も、サビのファルセットのメロディがとても優しい隠れた名曲。
リンダとリードを分け合い、リコーダーの音色が印象的な「アイ・アム・ユア・シンガー」。
コーラス・ワークが心地良いのが「トゥモロウ」。
「イエスタデイ」とコード進行が同じだとか、いろんな意味で話題に出される曲ではあるが、そういうのとは切り離して、この曲そのものを楽しみたい。割と「面白い」曲だと思うな。
ラストの「ディア・フレンド」は、ラストならば当然のごとく(?)ポールお得意のピアノ・バラード。
この曲の適度な重さはすごく好きなんだけれど、もう少し練り上げていったならば、前作の「バック・シート」のような名曲にもなりえただろうに。
そういった意味ではちょっと惜しい曲。
ただ、その【原石感覚】が、このアルバムを象徴していて、「いい」とも言えるか。
オリジナルはここまで。全8曲という曲数の少なさも、印象度としてはマイナスか。
ポール・ファンでもこのアルバムを聴いた事のない、という人はかなり存在していると思われる。
でも、思ったよりいい作品なので(笑)、聴いてみてほしいなあ。
現在CDでは、当時のシングル曲A・B面がボーナス・トラックとして収録されている。
♪ ラララと可愛く歌う子供向け(?)の「メアリーの子羊」や、
テンポのいいリズムに♪ オーイエー...が楽しくなる「リトル・ウーマン・ラヴ」など。
ちなみに、僕の持っているCDには「アイルランドに平和を」が収録されてない。
この曲は、シングル曲でもあり、ポールにしては珍しい攻撃的な曲調との事で、聴きたいのだけれど、わざわざこの一曲のために『ワイルド・ライフ』買い直すのはちょっとなあ...(笑)。
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