17年リリースの5thアルバム。
収録曲のリストを見て、まず驚いたのは、「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」と「夜空。」が入ってた事。この2曲は、昨年出たバラード・ベスト盤に収められたから、限定盤だったとは言え、「アルバムに収めた」という事実が出来たので、つづくNEWアルバムには入らないものだと思ってた。それがまさかの収録。なんだか、miwaが曲を作れなくて、アルバムとして曲数揃えるために無理矢理入れました、って気がしちゃう。
それに、前作以降のシングルで、素直に好きになれたものもなかったので、なんだかあまり期待できないアルバムかもなあと思っていた。
だけど、アルバムのリリース直前に観た主演映画の曲がどれもなかなか良かったので、やっぱ少しは期待できるかも、と思い直して聴く事ができた。
1曲目「SPLASH」。
冒頭の「♪水面に映る」が象徴する様に、穏やかな水面のイメージが想起される、静かな始まり。が、それも束の間、力強いリズムと弾けるチョッパー・ベースが入り込んでくる。「♪チュールッチュー」というコーラスも印象的で、穏やかになったり力強くなったりと、曲は表情を変える。コーラスと言うか、合いの手のように入る「SPLASH!」という弾けた声がいかにもmiwaっぽい。
2曲目「結 -ゆい-」。
NHKの合唱曲ともなった、壮大なバラード。合唱を念頭に置いて作られたからか、miwaがいつもにも増して太い声を出そうとしている感じ。でもやっぱ、この曲は合唱よりもソロだよね。バラードなので、いまいち僕の心にはグッと来ないんだけど、このアルバムの世界観を作っている重要な曲という気はする。
3曲目「Princess」。
思いっきりカントリー・タッチ。マンドリンの音色が耳に残る。可愛い女の子をイメージさせる曲なんだけど、派手さはなく、さりげない感じがいいのかもしれない。でも、これはシングル曲。派手さのないシングル曲ってのは冒険な気がする...。
4曲目「夜空。」。
シングルだったけど、ハジ→とのデュエットで、僕はロクに聴いてなかったので(笑)、こうしてアルバムに入って、ようやくじっくり聴く事となった。最初抱いてた印象より良くなったかな。切なさと言うか、深刻さを感じる曲だな。中盤の間奏前の「もう一度あなたと出逢いたい」のmiwaのヴォーカルが圧巻。
5曲目「君と100回目の恋」。
映画の主題歌となったバラード。映画と同タイトルだし、歌詞の内容も、映画のストーリーに沿ったものとなっている。でも、TVで映画の宣伝で歌われてたのは「アイオクリ」の方なので、いまいち主題になれなかった。僕は好きだけどね。今となっては珍しく、miwa単独の作詞作曲なのも嬉しい。
6曲目「アイオクリ」。
映画の宣伝でTVでも何度も歌われてたので、これが主題歌っぽい印象になってしまった。たしかに、キャッチーなメロディだし。サビに入る瞬間はゾクゾクする。作曲はmiwaではないけど、miwaの曲として違和感がない。映画の中のバンドの曲として、演奏はandrop、そして坂口健太郎がフィーチャーされるのだけど、坂口くん、歌が下手でね(笑)。何度も聴いてると、それも味として聴こえてくるけど。
7曲目「シャンランラン」。
「Princess」との両A面シングルだったけど、その「Princess」をちょっとだけ派手にしたような感じで、イメージ的にはすごく似てる両曲。なんとなく、miwaの限界を感じてしまった寂しさを伴う曲。
8曲目「ATTENTION」。
ハードにギターをかき鳴らすmiwaの姿が想像できるカッコいい曲。こういう曲もないとね。
9曲目「変わらぬ想い」。
これって、カヴァーなのだろうか?それともmiwa向けに作られた曲なのだろうか?ともかく、作曲はmiwaではない。サビのメロディは覚えやすいんだけど、いささか大きすぎるというか、大袈裟な感じが鼻につくかな。miwaが作った曲じゃない、ってのも納得。
10曲目「泣恋」。
冒頭で、水滴が落ちる音が聴こえてくる。当然、1曲目の水面のイメージを思い出すので、なるほど、ここに来てリンクする感じは、コンセプト・アルバムなのか、と。映画の曲でコラボしたandropがここでも演奏。となると、これは映画用として作られたけどボツになった曲なのか?と邪推してしまう。
11曲目「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」。
これまたバラードなのだが、シングル曲だった。TVドラマの主題歌にもなったし、シングルとして聴いた時は、もうこういうバラードはいいよ、と思ったものだが、こうしてアルバムのラストに収められると、スケールの大きさを感じるし、どっしりといい感じでアルバムがまとまる。嫌いではなくなった。シングルとしてじゃなく、最初からアルバムのラスト曲として聴けてたなら、もっと素直に感動できて評価できたかも。
とにかく、穏やかな、静かなイメージのアルバムだった。
昨年、バラード・ベストを出して、バラードは一区切りかな、と思ってたのだけど、蓋を開けてみたら、これまたバラードが一杯で(笑)。バラードじゃない曲でも、派手な曲は少なく、結果、こういうイメージのアルバムとなっていた。
地味、というのとも違うんだけどね。
静けさの中で、miwaの透きとおる声が浸透していく感じ。
やっぱり、コンセプト・アルバムだったのかもしれない。
でも、本当にコンセプト・アルバムだったとしたら、「ATTENTION」は入れないはずだしな。どうなんだろ。
それから、今までのアルバムと違うのは、ハジ→と坂口健太郎という2人の男とのデュエットを入れている事。いや、アーティストなんだから、他アーティストとコラボする事は悪くないんだけど、今までアイドル的な面も含めて売ってきたmiwaがいきなりデュエット、しかも1つのアルバムの中で2人の男と、となると、なんだかmiwaが二股をかけている悪女のように感じられて、イメージが悪くなっているような気がしてしまうのは僕だけか。
そして、いつものmiwaのアルバム、という事を考えるなら、決定的に欠けているのは、「春になったら」とか「ミラクル」とか「君に出会えたから」のような、可愛いながらも、元気に弾ける曲。
最近そういう曲は書けなかったのか?という事なのだが、実はある。
映画の中で使われた「単純な感情」という曲だ。
これが、「♪ Yeah Yeah Yeah」とキャッチーに、すごく元気にmiwaが飛び跳ねながら歌ってた、明るい曲だった。映画の中で1部分、1回しか聴いてないけど、miwaらしくていい曲だなあ、と思ってたんだ。
でも、残念ながら、今回のアルバムには未収録。
miwaが作った曲じゃないからなのかなあ?と思ったんだけど、調べてみたら、正真正銘、miwaの作詞作曲。しかも、共作ではなかったんだから、これこそ、miwaのアルバムに入れるべきだったなあ、と。
でも、この曲もアルバムに入れるとなると、映画でmiwaが歌った3曲全部収録という事になってしまい、サントラ盤の立場がなくなってしまうので、この曲は入れなかったんだろうな。これを聴きたかったらサントラ盤買いなさい、という思惑が透けて見える。
穏やかなコンセプト・アルバムにしたかったから、この曲は外した、という言い分も聞こえそうだけど、「ATTENTION」が入ってるんだし、それはやっぱり苦しい言い訳だな。
みんなが望んでいるmiwaって、こういうイメージの曲だと思うんだよね。
その「単純な感情」が入ってれば、色が変わって、もっと良いアルバムになった気がするなあ。
最初にこのアルバムを聴いた時は、穏やかすぎて微妙、というか、即座に胸にグッと来る感じがなくて、いまいちかなあと思ったんだけど、何度か繰り返し聴いてみて...4、5回目あたりかなあ、なんとなくしっくりと来て、これはこれでいいと思うようになった。
こんな、穏やかなアルバムもあり、かなと。
落ち着いた気分になれるアルバムだ。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●