マンドゥ・ディアオはスウェーデンのバンド。
2002年にデビューし、僕は衝撃を受けました。
古いロックやベテランのアーティストばかりを聴いていた僕にとって、久々に、リアルタイムでデビューの時を共有できた(しかもかなり年下の)バンド。
そのガレージっぽくもありパンクっぽくもありモッズっぽくもある、それでいて正統派なロック・バンドの雰囲気も漂うマンドゥ・ディアオに、すぐに虜になりました。
「これは絶対に世界中で売れる」
「オアシスを抜く存在になる」
そう確信し、興奮して、彼らの活動を追いかけました。
初来日も含め、ライヴも2回行きました。
でも、思った様には売り上げは上がりませんでした。
日本ではそこそこ話題になりましたけど、世界で売れるような気配がない。
おかしいな、こんなはずじゃないんだけどな。
そんな思いで見守ってきましたが、5枚のオリジナル・アルバムを出した後、ベスト盤が出た所で日本のレコード会社との契約も終了。
おそらく、日本だけでなく、母国以外での契約が切れていったものと思われます。
ワールド・ワイドな活躍は望み薄となりました。
それでも、僕は彼らを追いかけようと思ったのですが、その後に出したアルバムは、リリース前にチラッと試聴してみると、それまでとはガラッと作風が変わり、僕の好きなガレージ・サウンドではなくなってました。エレクトロニカと言っていいのかわかりませんが、なんか、妙な環境音楽のような。
それで、日本盤のリリースはないわけですから、輸入盤に頼るしかない訳なのですが、これも、母国スウェーデン盤という事になるからなのか、値段が非常に高く、CD1枚4000円近くしました。
好みのサウンドじゃなくなってるのに、この値段では手を出す気にはなれないなあ...。
そうやって、マンドゥ・ディアオから、心は離れていきました。
そして、マンドゥ・ディアオは、ビートルズのジョン&ポールのような、二大巨頭、グスタフとビヨルンという、二人のソングライターかつフロントマンがいる事が大きな魅力だったのですが、いつのまにか、グスタフが脱退していたという事を知り、愕然としました。
こんなはずじゃなかった。
そう思っていたのは、我々ファンだけでなく、グスタフも思っていたのかもしれません。マンドゥに見切りをつけて、バンドから去る選択をしてしまいました。
バンドの顔だったグスタフが抜けるなんて。
これはもう、マンドゥは終わったな...。
僕はそう思いました。
それが今年になって。
マンドゥに関するニュースが、ここ日本でも多く報じられるようになってきたのです。
ベスト盤を発表した後、日本での契約がなくなってからは、マンドゥの情報を仕入れるのには苦労するくらい、なかなかニュースにはなってなかったのですが、今年はなんだか違いました。
いろいろと活動の情報が入ってきて、NEWアルバムをリリースするという話も入ってきました。
それでも、上記のような理由から、あまり期待はしてませんでした。
また変なサウンドなんじゃなかろうか、と。
でも、公開された「Shake」「All The Things」を聴いてみたら、これは僕が好きだった頃のマンドゥに戻ってるんじゃないか?と。
これならアルバム買ってみてもいいんじゃないかと思ったのですが、またCD4000円とかするんじゃダメだよなあ、と思ってたら、そんな事なくて。
ちょうど、HMVのまとめ買いセールをやってたので、1200円で買える事となり、これならと購入してみたのでありました。
1曲目「Break Us」。
ビヨルンがピアノをバックに、静かに、朗々と歌い始めます。
途中からピアノのアタックも強くなり、ビヨルンのヴォーカルにも力が入る。喉が震えているのがわかります。
途中からバイオリンが入って来たりもして、一段と盛り上がるのかと思ったところで終了。
2曲目「All The Things」。
冒頭から「♪ Hey!」と勇ましい掛け声が入る。
そして、ベースが唸るビートを刻み始めると、思わず興奮してしまいました。
これだ!マンドゥが帰ってきた!と。
久し振りに僕を熱くさせてくれた、大好きな曲です。
3曲目「Good Times」。
ややエレクトロ・ポップなサウンドで始まったかと思いきや、サビではギターのカッティングも光るバンド・サウンド。
ビヨルンの絞る様なヴォーカルも魅力。
4曲目「Shake」。
おさえる様なギターのフレーズとビヨルンのバラード的な前半から一転、サビはダンス・ナンバーのようなノリの良さになり、「♪ I need somebody」の後の切り裂くようなギターが堪らない。
中盤でメロウになる展開も素晴らしい。
5曲目「Money」。
とにかくイントロの、転がるようなギターの音色が気持ちいい。
そして「♪ マネ、マネ」と入るロボット的なボイスがコミカルで面白い。
これもサビのノリが良く、ライヴでは拳を挙げてしまいたくなるような感じで、是非ともライヴで聴いてみたい曲です。
テロテロのギター・ソロも素晴らしいです。
6曲目「Watch Me Now」。
ここでまたグッと引き締まった感じになります。
これはメロディが特に素晴らしい曲ですね。孤独な男の哀愁を漂わせる曲が得意なビヨルンの独壇場です。
中盤のギター・ソロは、二人が交互に弾いてるのかな?これも聴き所ですね。
7曲目「Hit Me With A Bottle」。
アコギでの弾き語り的な、静かなアコースティック・サウンドです。
だけどそこはビヨルン、これもまた熱のこもったヴォーカルでして、単なる静かな曲という印象はないです。
後半にはささやかなコーラスが入る所が小技が効いてます。
8曲目「Brother」。
どこかおどろおどろしく怪しげな雰囲気です。ドアーズっぽいです。
9曲目「Dancing All The Way To Hell」。
前半は抑えた演奏だったのが、だんだんと熱くなっていくビヨルンのヴォーカルに呼応するように、バンドの演奏も厚みが加わっていきます。
そしてこれはなんと言っても、サビの「♪ yourself yourself yourself」の連呼でしょう。これはライヴでファンが拳を突き上げながら合唱する姿が目に浮かんできます。
10曲目「One Two Three」。
ベース・ラインがリードする曲。
間奏辺りからダンサブルになって、思わず体が疼いてしまいます。
11曲目「Voice On The Radio」。
終盤のハイライトです。ここに来てさらに名曲の登場です。
メロウで切ないメロディとサウンドにやられてしまいます。
とても優しい曲だと思いました。
マンドゥは懐古主義だとよく批判されましたが、それがマンドゥの良さなんです。
間奏での機械的なボイス・エフェクトは、曲のタイトルも相まって、バグルスを思い出してしまいました。
12曲目「Without Love」。
ささやくようなビヨルンのヴォーカルが印象的です。
サビの「♪ No no no without love」のメロディもとても憶えやすいです。
とても穏やかな曲です。明るい希望が見えましたね。
というわけで、期待以上の出来でした。
僕の好きだったマンドゥが帰って来てくれました。
全12曲で45分というのも聴きやすくて、何度もリピートしてしまいました。
クールなのに熱い。そんなイメージが一層強くなりました。
好きだったマンドゥが帰ってきたとは書きましたが、おそらく、僕が昔ハマってた頃のメンバーとは違ってるという事もあってか、サウンドは微妙に違います。
なんとなくですが、全体的に優しいサウンドなんです。
あ、うーん、優しいと一言で言っちゃうと誤解を招くかもですが、昔は、攻撃的なガレージ・サウンドが魅力だったのですが、それだけではない、大人の懐の深さを持ち合わせた感じがするのです。
そういう意味で、優しいというか、余裕がある感じです。
それが新たな魅力になってますね。
ただ、アルバムは素晴らしかったのですが、どうしても思い出してしまうのが、グスタフの事。
マンドゥのアルバムは、ビヨルンの曲とグスタフの曲があって、それぞれが個性を発揮しているのが魅力でした。
だから、こうしてアルバムすべてをビヨルンのヴォーカルだけで埋め尽くされているというのは、どこか違和感があり、寂しくもあるのです。
ああ、ここにグスタフがいたら、さらにもっと凄かったんじゃないか、って。
でも、グスタフの事を考えても仕方ありません。
逆に、グスタフがいなくなったからこそ、ビヨルンは奮起し、ここまで素晴らしいアルバムを作れたのかもしれません。
曲作りには、ビヨルンだけでなく、他のメンバーも深く関わっています。
バンドとして一丸となっている様子も伝わってきます。
これなら、マンドゥ・ディアオは、大丈夫です。
VIDEO
↑ 「All The Things」。
冒頭から「♪ Hey!」と勇ましい掛け声が入る。
そして、ベースが唸るビートを刻み始めると、思わず興奮してしまいました。
これだ!マンドゥが帰ってきた!と。
久し振りに僕を熱くさせてくれた、大好きな曲です。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●