[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2001年に書いた記事です
2000年10月、さいたまスーパーアリーナ内にオープンしたジョン・レノン・ミュージアム。
しかし、何故かあまり興味がなかった。
高校の時くらいに、何度かデパート等で催されるビートルズ展やジョン・レノン展を観に行った事があったためか、なんとなく、もういいか、って気持ちだったのだ。
しかし、最近発売された『ミルク・アンド・ハニー ~ニュー・センチュリー・エディション』などを聴いているうちに、せっかく近場でやっているんだし、行ってみたって悪くないよな、という気分になった。
ジョンのファンなら1回くらいは行っとけよ、お前...と自分に言い聞かせて(笑)。
てな訳で、初めはあまり期待していなかったのだが...。
初めて降りる『さいたま新都心』駅。
さすがに綺麗だ。まだ工事中の部分もあり、どことなく閑散としてもいるような、これからの場所、という不思議な雰囲気。スーパーアリーナは目の前。駅を降りてすぐだ。
平日の3時、外は雨という事で、あまり来館者もいないように思えた。
レノン・ミュージアム、まずはじめはシアターホールに案内され、ジョンの足跡をザッと追ったフィルムを観る事から始まる。
入れ替え制で行われるフィルム上映、数十席あるシアターホールに案内されたのは僕一人だ(笑)。貸し切り映画館なんて初めて。
僕しか客はいないとなると、係の女性の丁寧な案内、説明もいささか恥ずかしい。
上映は7~8分だろうか、なかなか凝った仕上がりになっているのだが、ジョンの歩みそのものはだいたいは知っている事なのであっという間だ。
フィルムのラスト、運命の日を描いた場面では、案の定(笑)「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のオーケストレーション部分が使われていて、迫力のある音にさすがに恐怖を感じる。やめようよ、あれ。怖いよ(笑)。
シアターホールを出ると、いよいよ展示コーナーだ。
コーナーは、ジョンの歩みを年代・テーマ別に9つのゾーンに分かれている。この分け方がなかなかいい。
各ゾーンが独立した雰囲気を持っていて、それぞれまったく別の空間を作り出している。
ゾーン1は『少年の記憶』。
まさしく、ジョンが少年時代、ロックンロールに出会うまでどんな少年だったかがわかるフロアだ。
母に対する思い、周りとの違い、自分の才能をコントロールしきれない時代のジョンがいた。
雑誌の切り抜きなどを貼り合わせ、自分のイラストや文を添えて作ったというオリジナルの雑誌が展示してあり、微笑ましかった。ジョンも同じ事やってたんだな、と(笑)。
50年程前のノートだというのに意外と保存状態がよく、黄ばんでいなかったのには驚いた。
壁の造りやポスターなど、キャヴァーン・クラブを模したような小さなフロアを抜け、ゾーン2『ロックンロール』へ。
いよいよロックと出会ったジョン。聴きあさったロックのレコード、クォリーメンの結成、ポールやジョージとの出会い、ハンブルク修行が紹介されていた。ビートルズへの布石が着々と打たれている感じ。
成功が描かれている、という意味で一番華々しいフロア...かな?ゾーン3『ザ・ビートルズ』。
楽器や衣装、作詞原稿の展示などと共に、ビートルズの歴史、その中で芽生えたジョンの葛藤なども表されているんだけど、願わくばこのフロアはもっと盛大にしてもいいのではないかな、と。
ビートルズという前半のハイライトになる部分なのだから、もっと中身を充実させてほしい。ちょっとまだ見応えさに欠けた、かな。ビートルズの紹介にしては、あまりにもアッサリしすぎ...。
サージェント・ペパーズの衣装を見終わると、エスカレーターが。それまでの4Fフロアから5Fへ移動、だ。
後半は当然、『ジョンとヨーコとの出会い』から始まる(ゾーン4)。
出会いのゾーンというか、主にヨーコとはどんな人物なのか、の紹介なんだけど。
ここでは二人の出会いのエピソード中でも有名なヨーコの作品群が。
本来はハシゴだったと思ったが、ここでは一角にステップ(階段)が用意されていて、上りついた先の天井には”Yes”の文字が。わかってはいても、思わずニヤリ、だ。
その他、想像の釘なども。芸術家ヨーコの感性をしらしめるフロアとなっている。
ゾーン5と6は区切られていないため、かなり広い空間となっている。白を基調としたフロアだ。
ゾーン5は『ラブ・アンド・ピース』だ。
ヨーコと出会い、平和活動、芸術活動に力を入れ始めるジョン。それと共にアルバム『ザ・ビートルズ』以降まとまりをなくしていくビートルズ。そして解散。
しかしジョンの歴史においてはビートルズが終わった事はさほど重要でないかのように感じた。
【ヨーコとの活動】という意味で、この時期は続いているのだ。
ビートルズ解散で決して区切られてはいなかった。
「ベッド・イン」などのイベントの後、ゾーン6『イマジン』はアルバム『ジョンの魂』『イマジン』の制作関連。
それらにまつわるインタビュービデオモニターも数台設置されている上に、大スクリーンでは『イマジン』の制作ドキュメント映像が。じっくり観たい所だったが、あまり時間がない。またの機会に...。
次のフロアへ進むと、そこは急に狭くなり、雰囲気もガラリと変わる!
『ニューヨーク・シティ』(ゾーン7)だ。
引き伸ばしたニューヨーク高層ビル街の写真が壁一面に広がり、天井がものすごく高く感じられる。
ジョンが最も攻撃的に政治活動をしていた時代だ。
マジソン・スクゥエアで行われたライヴ映像も流れているこのフロア、割とお気に入り。その前の『イマジン』フロアとのギャップがいいのだ。
しかし、そんなジョンの勢いも長くは続かない。アメリカ政府からの執拗なマークに疲れ、活動も尻すぼみ。
ヨーコとも別居生活に入ったゾーン8『失われた週末』だ。
アルバムで言えば、大好きな『心の壁、愛の橋』時代なのだが、このフロアはかなり異質。
9つのフロア中、一番小さい。展示物もほとんどないと言っていい。そして、当時のジョンの心の中を表しているような...どんな作りになっているかは観てのお楽しみ。
ヨーコと再会、ショーンの誕生で、家族の中に新たな愛を確認、主夫生活と共に心の安らぎを見つけていくゾーン9『ハウス・ハズバンド』はアットホームな雰囲気だ。
ダコタハウスの部屋はこんなだったのではないか?と錯覚さえしてしまうほどだ。
日本へのお忍び旅行の様子や普段着の展示など、最後の5年間、ジョンは幸せな毎日だった事が伝わってくる。
そして音楽活動の再開、『ダブル・ファンタジー』の制作後、運命の日を迎える...。
最後のファイナル・ルームは、一面白。
中央にあるボードには歌詞や発言から抜粋したジョンの言葉が多数並んでいる。
一通りジョンの歴史を振り返り、そしてまた自分の人生に重ね合わせた後、これらのジョンのメッセージは、改めて心に染み込み、そして時には突き刺してくる。
「強さを追いもとめても、それでほんとの成功が手に入るわけじゃない」
「真実をもとめてよりよい生き方をさがしてるって?そんなの自分自身を見つめることから逃げるためのいいわけだろ?」
「人生ってきついよね 食ってかなきゃならないし気配りもしなきゃならない 人を愛さなきゃいけないし一人前にならなきゃいけない すごくタイヘンだよ ときどきめげそうになるよ」
「ぼくがこれまでどうやってきたかは教えられる けど きみがこれからどうするかは自分で考えなきゃ」
そんなジョンからのメッセージを、もっとじっくりかみしめていたかったのだが、ちょうどここでタイムリミット。
閉館時間の6時となり、追い出された(笑)。
解説文を一部英語で読んだりとか、じっくり観すぎていたためか3時間でも足らなかった。
後半は時間に追われながら進んだので、もう少し余裕を持って観たかった。
ジョンにゆかりのある展示物を並べた展覧会と言うより、各ゾーンの雰囲気もひとつの芸術となってフロア全体が作品となった美術館、まさしくミュージアムである。
もう一度、いや何度でも足を運ぼう、そう思うに足りるものであった。
(2001.10.17)
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