昨年、スティングが久し振りにロック・アルバムを作ったというニュースを聞いて、なんとなく興味が湧いた。
でも、スティングは、ポリスも含めてベスト盤くらいしか持ってないので、到底ファンだとは言えない。だから、慌てて買う様な感じではない。
だけど、そんな僕でも、このアルバムにはなんだか惹かれるものがあったんだよね。
ロックに戻ってきたスティングの姿勢に。
で、日本の音楽番組に出て歌ってるのを聴いて、まずまずいいかなとは思ったのだけれど、やはり熱心なファンではない故、慌てて買う気にもならず、でも、ずっと気にはなっていた。
それが、つい最近になって、思いがけずスティングの来日公演に行く事が決まって、これはNEWアルバム聴かなきゃな、と決心がついたのだった。
まだそこまでのファンではないし、スティングのオリジナル・アルバムなんて1枚も聴いた事ないから、僕の好みに合うのか心配で、NEWアルバムも出来ればレンタルで済ませたい所だったのだけれど、洋楽アルバムはリリースから1年間はレンタル禁止というルールがあるのを聞いていたので、これはもう仕方なく買う事にした。
国内盤、輸入盤、デラックス盤といろいろあったのだけれど、最近はボートラが入ってるのはあまり好きじゃなくなってきているし、そのボートラも別ヴァージョンとかライヴ音源という、僕の好きではないパターンだったので、それならこれはスッキリと本編のみで、1番安い輸入盤にしよう、という事にした。
しかし、買ってから数日後、TSUTAYAに行って、何気なく棚を見てたら、このNEWアルバムがレンタルされているではないか!超ビックリ。洋楽アルバム1年間レンタル禁止というルールはいつの間にか撤廃されたのだろうか。
これを知ってたら、買わずにレンタルで済ませていただろうに...。
16年リリース。
1曲目「I Can’t Stop Thinking About You」。
とにかく、イントロのベースとドラムのドドドンッていう導入部の音が気持ちいい。力強いはずなのに、意外に柔らかくて、絶妙な音。これはCDで聴いて良かったな。それからギターのリフが続いていって、これがスティングの今のロックだ、という宣言。ポリス初期の様な激しさはないけれど、大人の余裕が感じられる佳曲。コーラスも耳に残るし、メロディはいくぶん単調ではあるけれど、わかりやすくて良い。
2曲目「50,000」。
前半は妖しげなギターのフレーズに、ささやくように歌うスティング。それがサビではギターが激しくリードしてミドル・ロックになる2段階構成の曲。
3曲目「Down, Down, Down」。
雰囲気は前の曲を引き摺ってるかな。Downというタイトルからして、暗い曲なのかとイメージしてたけど、そんな事なかった。暗く落ち込んでいると言うより、ちょっと困っちゃうよねとおどけて見せる感じ。ここにも大人の余裕が。
4曲目「One Fine Day」。
これもとても柔らかくて気持ちのいいサウンド。ポップ・ロックなんだけれど、穏やかで優しい気持ちになれる、とても好きな曲。どうだい、とてもいい日じゃないか、って言ってるんだろうね。そのまんまの気分。
5曲目「Pretty Young Soldier」。
メランコリックなリズムに身を委ねるといい。
6曲目「Petrol Head」。
いくぶんニューウェーヴ的なロック曲。このアルバムの中で1番激しいね。大好き。ギターがエキセントリックなフレーズを奏で、サビではリズム隊も一段と力強くなり、スティングも負けじとシャウト。そしてCメロではメロウなメロディに一変する構成も好き。アルバムのハイライトと言えるだろう。
7曲目「Heading South on the Great North Road」。
アコギでの弾き語り風で、寂しく孤独な感じが出ている。
8曲目「If You Can't Love Me」。
延々と繰り返されるギターのアルペジオが印象的で、それから段々と、徐々に、じわじわと、演奏とヴォーカルに熱がこもっていく感じがライヴっぽくて素晴らしい。決して派手な曲ではないのに、この盛り上がり方には、こちらも熱くなる。
9曲目「Inshallah」
とにかく、「♪ インシャラ~インシャラ~」ってフレーズが耳に残る。これはイギリスでもアメリカでもなくて、中東の様なアジアの様な、どこかの国の祈りの歌の様に思える。非常に抑えた演奏。
10曲目「The Empty Chair」。
これもアコギでの弾き語りと言えるシンプルな演奏。でも、7曲目の弾き語りよりもこちらの方が優しい感じが出ているかな。大人の子守唄。
久し振りのロック・アルバムという触れ込みだったけれど、明らかにロックな感じなのは「I Can’t Stop Thinking About You」と「Petrol Head」くらいなもんなので、ポリス初期の様な激しさを求めてしまうと、肩透かしを食らって「どこがロック・アルバムじゃい!」と憤慨した人もいるかもしれないけど。
でも僕はスティングの今までのソロ・アルバムを聴いた事ないので、今までのアルバムとどう違うのか比較できないし、僕のイメージでは、スティングのソロってジャズっぽいのかなあ、ってイメージがあったから、それからすると、やはりこれはロックなアルバムだなと。
とにかく、大人の余裕、渋み、円熟と言った言葉がよく似合う。
でも、歳を重ねてはいるけれど、枯れた味わいというのとも違う。
「久し振りにロックしてみたけど、どうだい?」と、照れ笑いを浮かべるスティングの姿が目に浮かぶようだ。
全10曲で40分に満たない潔さがすっきりしてて聴きやすく、何度もリピートしやすかった。それも魅力のひとつ。
もちろん僕も、もっと激しいサウンドでも良かったと思っていたクチだけど、スティングもかなりの歳だし、まあポリスみたいにはならんだろなとは思ってたので、想定内のサウンドだった。
想像以上でも以下でもなく、それがいい意味で心地良くて、充分満足のいくものだった。
レンタルで済ませられるのならレンタルで良かった、と聴く前は思ったのだけれど、実際に聴いてみて、それは覆った。
何より、音がとても気持ち良かった。
全体的に柔らかくて温かい音で、これはiPodのヘッドフォンでは味わえない、CDをスピーカーで鳴らして味わえる感触。
買って正解だったな、と今では思う。
武道館のチケット、まだ余ってますよ。
興味ある方は是非。
↑ 「Petrol Head」。
いくぶんニューウェーヴ的なロック曲。このアルバムの中で1番激しいね。大好き。ギターがエキセントリックなフレーズを奏で、サビではリズム隊も一段と力強くなり、スティングも負けじとシャウト。そしてCメロではメロウなメロディに一変する構成も好き。アルバムのハイライトと言えるだろう。
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