[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2003年に書いた記事です
エリオット・スミスの訃報を受けて、『フィギュア8』を聴いてる。
3年前、エリオット・スミスが何者だか、どんな曲か聴いた事もないのに、「いいらしい」との情報を仕入れて、購入したのを憶えている。どこから仕入れた情報で、何故それを信用したのかは憶えてないけど。
でも、1回聴いて「あまり期待してたほどではなかったな」と感じ、それっきり。
おそらく、よほど気が向かない限り再び聴く事はないだろうなあ、なんて思ってた。
それが、こんな形で再び聴く事になるとは思ってもみなかったけど。
でも、なんだか聴かずにいられなかったんだよね。
「ピンとこなかったアルバム」だった、というのに。
いや、むしろ、「ピンとこなくて申し訳ない」なんて気持ちがどこかにあったのかもしれない。ずっと。
今までも、CDラックに収まったままの『フィギュア8』を目にすると、何故かそんな気持ちがしてた。
だからか、この訃報を受けて、衝動的にこのCDを掴んでいた。
1曲目「サン・オブ・サム」のイントロを聴くだけで、胸が締め付けられる思いがした。
つーか、すげーいいじゃんか、このアルバム。
どの曲も、せつなく美しく、はかない。
2~3分と短い曲が多いのも、聴きやすい。
7曲目「イン・ザ・ロスト・アンド・ファウンド」も、なんて可愛くてせつない曲なんだろう。
女性だったら、母性本能くすぐられまくりだろう。
「ウドゥント・ママ・ビー・プラウド?」「ハピネス/ザ・ゴンドラ・マン」等は、サビのリフレインが温かく印象的。
数々の美しいメロディに心奪われながらも、さらに衝撃的だったのは、歌詞だ。
5曲目。「エヴリシング・ミーンズ・ナッシング・トゥ・ミー」だなんて。
彼の亡くなり方を知った今では、サビのリフレインはやりきれない思いだ。
「LA」、「キャント・メイク・ア・サウンド」等の歌詞も、辛いものがある。
きわめつけ、本編最後の曲は「バーイ(BYE)」だ。
3年前の作品なのに、現在との悲しいリンクが多すぎる。
これ以降、彼のアルバムは発表されていない。
結局、エリオット・スミスの事は今でもほとんど何も知らないままなんだけど、彼がとても繊細な人間だった、というのは音を聴けばわかる。
繊細なエリオット・スミス。
でも、それだけわかれば充分なような気もする。
こんな形で、このアルバムの良さを理解できた、というのも悲しいけれど、
こんな素晴らしい音楽に出会えた事を心から感謝しよう。
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[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2003年に書いた記事です
スカパーのPPVにて放送された『マジンガーZ 対 デビルマン』。
当時、大好きだった2大ヒーローが同じ画面に登場する展開、というのにすごく燃えたのを憶えている。
当然の事ながら録画観賞。
マジンガーZ 対 デビルマン、とは言うものの、当然、両者が戦うという訳ではなく。
舞台設定はマジンガーZ側。マジンガーの世界に、デビルマンが助っ人にやってくる、というようなもの。ミキやタレちゃんは出てきません。
マジンガーの世界という事で、敵キャラの格も、マジンガー方が上。デビルマン方の人気キャラ、魔将軍ザンニンやシレーヌも出てくるんだけど、マジンガーの敵キャラDr.ヘルらに協力を求められると、何故かスンナリ忠誠を誓っちゃったり。悪魔がそんなんでいいのか、とツッコミたくなるが。
出会った当初は反目しあい(つうか、不動明が一方的に煽ってる)、タイマンしようともする兜甲児と不動明だが、あっさり認め合い、手を組む事に。
しかし、ただ一緒に闘うだけのストーリーではなく、それまで空を飛べなかったマジンガーが、不動明に「マジンガーの弱点は空からの攻撃に弱い事だ」との指摘を受け、ジェットスクランダーを開発。
これで空でも活躍できるようになる、というエピソードを盛り込んでいる。
それにしても、マジンガーZとデビルマンが共に戦うなんて...ああ。今でもナミダモノ。
続いて放送された『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』。
こちらも、東映まんがまつり用劇場版だが、作品としては『対 デビルマン』よりも数段上の出来。
当時TVで放送されたのを観て、非常に強烈な印象を受けたのを憶えている。
何が強烈って...僕らのヒーロー・マジンガーZが、戦闘獣の総攻撃を受けて、ボロボロになっちゃうんだから。なんとか数匹倒すのだが、次から次へと襲い掛かる敵。とりかこまれて万事休す。ほんと全身ボロボロで、半分泣きそうになって観てたっけ。
そこへ現れるのがグレートマジンガーなんだね。
このグレートが強いのなんのって。
あれだけZを苦しめた戦闘獣をあっさり片付けてしまう。
実はこの映画公開時、TV版『マジンガーZ』は最終回目前で、その後番組として『グレートマジンガー』が控えてたための、ヒーロー交代劇なんだね。
後日放送されたTV版『Z』の最終回もほぼ同じ内容だった。
「Zよりも数段強いロボットが完成した。凄い強いでしょ?Zはこれでお役御免。次からはグレートマジンガーを観てね」というメッセージだ。
でも、僕は複雑な気持ちだったなあ。
グレートマジンガーの圧倒的な強さにはもちろん惹かれたんだけど、滅びゆくヒーロー、マジンガーZの姿が忘れられなくて。
もう用はなくなってしまった悲しみも手伝って、その後毎週グレート観てたけど、Zの方が好きなままだったな。
そんな、当時の気持ちを思い出させてくれた映画だったけど、この時のグレートマジンガーのパイロット・剣鉄也の声が田中亮一だったのがビックリ。デビルマンの声じゃん。
さすがにそれではマズイと思って、TVでは野田圭一になったのかな。
技を繰り出す時の叫び声がデビルマンを思い出しちゃうもの。
このあたりの作品はビデオ出てるのかな。
レンタルビデオをほとんど利用しない僕にとっては、こういうのをスカパーでやってくれると非常にありがたい。
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[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2003年に書いた記事です
デヴィッド・ボウイの新譜『リアリティ』。
前作『ヒーザン』が良かったので、非常に期待してたのだけど、今回もなかなか良かった。
『ヒーザン』は全体的に暗く(そこがいい雰囲気で、僕の好みに合致)、賛否両論あったけど、『リアリティ』はバラエティに富んでいるし、よりロックな仕上がり。
オープニングの「ニュー・キラー・スター」から、なかなかいい感じ。
ギターの音はクルクル回転してるみたいだし、不思議な世界への扉が開く。
前作よりロックと言ったけど、それは「パプロ・ピカソ」「ルッキング・フォー・ウォーター」「リアリティ」といったアップテンポのナンバーが多いから。
どれもカッコいい。ライヴで盛り上がりそう。
「パプロ・ピカソ」のイントロなんて、氷室京介みたい。いいぞ。
ジワジワと盛り上がっていく「ネヴァー・ゲット・オールド」。
前作の空気を一番受け継いでるのは「ザ・ロンリエスト・ガイ」。
前作が好きな僕は当然好き。
アコギの音がせつなく響く「デイズ」もいい。
ジョージ・ハリスンの「トライ・サム・バイ・サム」のカヴァーもなかなか。
ボウイ本人はロニー・スペクターしか知らなかったようだけど(カヴァーしてから初めてジョージ作だと知ったらしい)、ジョージのヴァージョンと比べても違和感はない。
丁寧にカヴァーしてる感じで好感。
本編ラストの「ブリング・ミー・ザ・ディスコ・キング」。
ディスコと名は付いてるけど、曲調はジャズ。
いやあ、ボウイ、今さらながら、渋い大人のアルバム作ったなあ、としみじみ。
日本盤ボーナス・トラックはキンクスの名曲「ウォータルー・サンセット」のカヴァー。
オリジナルは、せつなくて大好きだったけど、ボウイ・ヴァージョンは、意外にも力強くてポップ。
そう言うと、楽曲の良さを活かせてないように聞こえてしまうかもしれないが、これがなかなかいいんだ。ボウイらしく華があって。
初回盤は、ボーナス・ディスクが付いていて、さらに3曲収録。
「愛しき反抗」のセルフ・カヴァーも含め、3曲ともいい感じ。
捨て曲を集めただけかな、と甘く見てたたんだけど、とんでもなかった。単なるオマケ、ではなかったよ。
600円違うから、初心者なら、通常盤でもいいだろうけど、少しでもボウイをいいと思った事のある人なら初回盤にすべきだね。
てなわけで、全盛期のものと比べてしまうのはどうかと思うけど、僕にしてみれば充分合格点。
もしかしたら、『スケアリー・モンスターズ』あたりの感じに似てるかも。
『ヒーザン』は、僕にとってもちょい暗め、後半ダレる、という点が気がかりだったが、今回は特に不満ナシ。
ファンの間でも評判いいみたい。
『ヒーザン』は、「僕は好きだけど、人には薦められないかも...」という感じだったけど、このアルバムなら薦められるかな。
来年3月には来日するんだよね。行かなきゃ!
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[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2003年に書いた記事です
エルヴィス・コステロの新作『ノース』。
バラード路線のアルバム、との事前情報で、期待と不安が入り混じる。
コステロのバラード・アルバムと言うと、『ジュリエット・レターズ』と『ペインテッド・フロム・メモリー』がある。
しかし、僕にとっては、『ジュリエット~』は全然ピンと来なかったアルバム、
『ペインテッド~』はコステロ全作の中でも1~2位を争うほど大好きなアルバム、
と大きく分かれるので、はたして今度のアルバムはどちらに近いのか、とハラハラドキドキだったのだ。
しかも、ネットで、アルバムを聴いたファンの声を調べてみると、「ピンとこない」「何度も聴きこまないと良さはわからなそう」というものの方が多くて、どちらかと言うと不安の方が大きかった。
しかし、1曲目「ユー・レフト・ミー・イン・ザ・ダーク」に、『ペインテッド~』に近い空気を感じたのでひと安心。
それで落ち着いて一通り聴けたんだけど、結論から言うと、「いいアルバム」との印象だ。
厳密に言うと、『ジュリエット~』とも『ペインテッド~』とも違う。
3作品とも、いわゆる「スタンダード・バラード集」であると思うんだけど、微妙な方向性の違いを簡単に言うと、
『ジュリエット~』は、クラシック寄り、
バート・バカラックと組んだ『ペインテッド~』は、あくまでポップス、
そして『ノース』はジャズ寄り、と言った感じ。
クラシックではなくてジャズならば、僕の好みに合致する。
ジャズに詳しいわけではないので、いい加減な意見かもしれないけれど、「サムワン・トゥック・ザ・ワーズ・アウェイ」や「レット・ミー・テル・ユー・アバウト・ハー」でのサックスやトランペットの響きは、僕の中ではジャズのイメージ。
『ペインテッド~』のように、一曲ごとに独立した良さがあるわけではないのだけど(どの曲も同じに聴こえる、といったファンの意見も)、アルバム全体を通して流れる、落ち着いた空気が、ものすごく心地良いのだ。
冷たくもなく温かくもなく。
まさに丁度いい温度感で聴こえてくる。
そこに絶望を感じるか希望を感じるか、受け手次第、という気がする。
僕は何度も聴きたい、と思った。
秋の夜長にピッタリ、の『ノース』だ。
そして間もなく来日公演。
ニューヨークのライヴのセットリストを見ると、『ノース』の全曲に加え、同じような世界観を持つ曲を中心に選曲されている。
期待してた「シップビルディング」や「オールモスト・ブルー」もちゃんと含まれている。
それから、「アクシデンツ・ウィル・ハプン」や「ピース・ラヴ・アンド・アンダースタンディング」といった、いつもライヴで盛り上がるような曲もある。
今回のような雰囲気のライヴの中で、どのようなアレンジで披露されるのか、興味深い。
というわけで、ライヴがますます楽しみになった。
実は、現時点でちょっと心配な面(ちゃんと行けるかどうか)もあるんだけど、とりあえず楽しみなのだ。
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[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2003年に書いた記事です
泣きながら聴くニール・ヤング『渚にて』は心に染みる。
『ハーヴェスト』あたりが好きな人はきっと気に入る...なんて言われてて、ならば聴いてみたいと思ってたものの、ずっと廃盤状態だったこのアルバム。
僕もすっかりその存在を忘れてたんだけど、この度やっとCD化。
あ、廃盤っつーか、CDにもなってなかったんだっけ。
こりゃめでたい、って事で即購入。
でも正直言うと、あんまり期待はしてなかったんだよね。
ベスト『輝ける10年(Decade)』に収録されてた「ウォーク・オン」とか「フォー・ザ・ターンスタイル」とかがそれほど好みじゃなかったので。
全8曲と少ないしさ。
まあ、でも、国内盤でも1800円で安いし。
とりあえず買って聴いてみたら、こりゃいいわ。
たしかに、『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』や『ハーヴェスト』のような華やかさ(とはいえ、それらも控え目な華やかさだったけど)はないし、中途半端な感は否めないんだけれど、そのテキトー加減がまさしくニール・ヤング、って感じで。
もうちょっと作りこめば、もっとすごいものになるんじゃない?ってのを、「これでいいよ」とばかりに食卓に並べてある感。
大雑把なのか繊細なのかわからない所がツボにくる。
これこそ、僕がニール・ヤングに感じる魅力かも。
すぐに気に入った2曲。
ギター・リフが「オハイオ」続編みたいな「レヴォリューション・ブルース」。
ベースがモコモコしてて、だんだんハマッてくる。
それから「渚にて」。
コード進行やパーカッションの使い方が好き。リズム・パターンをちょっと変えればカーティス・メイフィールドになるかも。
それにしても、やるせないっつーか、だるいっつーか、暗いっつーか。しかも長いし(約7分)。
このアルバムが発表当時に酷評されたってのはこの曲のような暗さゆえ、かも。
でも、そこがいいんじゃんかねえ。
間違いなく、このアルバムのハイライト。
他にも、さりげない良さを持った曲が並べられている。
このアルバムをジョン・レノンの『ジョンの魂』と比較した雑誌もあったとの事だけど、特に「アバウト・トゥ・レイン」のエレピの響きを聴いてると、それも頷ける。
ラストの「アムビュランス・ブルース」でのゆったりした流れ。
味わいのあるハーモニカ。
トータルでも40分。
つい、通して全部聴いてしまう。全曲聴いてしまう、ってのはアルバムとして大成功でしょ?
噂に違わぬ名盤だったね。
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