ポール・マッカートニーが好きなら、ラズベリーズを聴いてみた方がいいという話はずっと前から知っていて、気になってはいた。
ラズベリーズというバンドがあるのは知ってたし、エリック・カルメンというミュージシャンがいるのも知っていた。でも、それがイコールだったと知ったのはつい最近の事。
それで、意を決して試聴してみた。
そしたら、まあ、うん、とびきりいいなとは思わなかったんだけど、なんとなくウイングスのような響きを感じたし、ベスト盤が800円と安かったので、この値段ならと思わず衝動買い。
ラズベリーズについてはほとんど情報を持ってなくて、70年代初めのバンドなのかなという事くらいしか知らない。
1曲目「Go All The Way」。
ハード・ロックのごとき歪んだギター・リフで元気よく始まったかと思ったら、Aメロではガラッとメロウに変わってドリーミーな流れ。その後もまたハードになってポール・マッカートニーばりのシャウトを聴かせたりと、展開も見事。2分50秒あたりのギターのアルペジオはポールの「Eat At Home」みたい。これがおそらくラズベリーズの代表曲。
2曲目「Come Around See Me」。
アコギを中心としたフォーク・ロックな味わい。ノリは良くもほのぼのとしたメロディ。
3曲目「Don’t Want To Say Goodbye」。
直球のバラード。優しいメロディをストリングスが優しく包む。でもどことなくハードなギターが顔を覗かせるし、終盤のシャウトやギター・ソロなど、たんなるバラードに収まらない展開も待っている。
4曲目「I Saw The Light」。
サビのコーラスが耳に残るし、終盤の思いきり力の入ったシャウトはまたもやポールみたい。
5曲目「I Can Remember」。
これまたピアノを基調としたバラード。曲調はギルバート・オサリバンみたいかな。と思ってたら、3分30秒くらいから曲調が変わる。ポール・マッカートニーお得意のメドレー形式の曲だった。後半はドリーミー・ポップなんだけど、さらにスリリングな展開も待っていて、かなりの大作だけど飽きない。
6曲目「I Wanna Be With You」。
キラキラと派手なギターの煌めき、追いかけるようなコーラス。初期ビートルズやバーズあたりのサウンドを思い起こさせる。
7曲目「Drivin’ Around」。
これはコーラスの作りとか、『Sunflower』あたりのビーチ・ボーイズを思い出す。
8曲目「Let’s Pretend」。
これもキラメキ・サウンド。
9曲目「I Reach For The Light」。
イントロのピアノの調べの、いかにも導入部といった雰囲気がまさしくポール・マッカートニーの、これからいい曲やりまっせという感じに似ていて萌える。ボードヴィル調の前半からシャウトを聴かせるサビまで変則的なバラード。コーラスとギターのフレーズがせつなくさせる。
10曲目「Nobody Knows」。
これはサビのメロディがおそろしくキャッチーで、一発で憶えられるし、一緒に歌いたくなって楽しくなってくる。アコギを中心としたサウンドでやや地味っぽいんだけど、そんな田舎臭さも愛おしくなる。
12曲目「Tonight」。
いくぶん重たいノリの曲。ハードでポップなノリにドラムが騒ぐ感じはフーみたい。
14曲目「Ecstasy」。
力強いけどあくまでポップ。これもドリーミーでキャッチーなサビのメロディのリフレインが心のツボを気持ちよく押す。そしてそのままファルセットを聴けばちゃんと昇天できる。
15曲目「Last Dance」。
これは途中で雰囲気が変わってカントリー調になるパートがあったりして面白い。
16曲目「I Don’t Know What I Want」。
これもフーみたいだなあ。
17曲目「Cruisin’ Music」。
これも70年代以降のビーチ・ボーイズみたいなメロディ、コーラス、サウンド。
20曲目「Overnight Sensation」。
これはどことなく陰があって、集大成的な感じがあるなあ。ベスト盤の最後の曲だからそう感じるのかもしれないけど、バンドの終焉みたいな空気があるし。演奏終了後、「Go All The Way」が微かに聴こえてくる。
実は、買った直後、後悔してたんだよね。たいして気に入ったわけでもなかったのに買っちゃったなあ、無駄遣いしちゃったかなあ、って。そんな思いもあって、買ってすぐには聴く気になれなかったんだ。
だけど、重い腰をあげてようやく聴いてみたら、その思いはすぐに吹っ飛んだ。
これ、すごいいいじゃないか、と。
たしかにポール・マッカートニーの影響受けまくりのメロディやヴォーカルは嬉しくなるし、曲はどれもポップでドリーミーな展開。
「Go All The Way」「Nobody Knows」「Ecstasy」が特に大好き。
他も、聴けば聴くほど好きになっていくのがわかる。
これはもっと聴いてみたい。
オリジナル・アルバムを聴いてみたいと思ったものの、なんとベスト盤以外は全部廃盤。
そのうちまとめてリリースされないかなあ。
↑ 「Go All The Way」。
ハード・ロックのごとき歪んだギター・リフで元気よく始まったかと思ったら、Aメロではガラッとメロウに変わってドリーミーな流れ。その後もまたハードになってポール・マッカートニーばりのシャウトを聴かせたりと、展開も見事。2分50秒あたりのギターのアルペジオはポールの「Eat At Home」みたい。これがおそらくラズベリーズの代表曲。