1ヶ月ほど前、とあるCDを探そうと思って、昔買ったCDが並べてあるラックを漁ってたら、レオン・ラッセルの『Blues』というCDが見つかってビックリ。こんなアルバム、買った記憶がない。きっと、勢いで買ってしまって、数回聴いて「こんなもんか」としまっちゃって、すっかり忘れたんだろうな。
この『Blues』というアルバム、97年にひっそりと出たもので、タイトルからすると、ブルースのカヴァー集か?と思ったものの、全曲レオン・ラッセルのオリジナルで、せっかく見つけたんだから、と冷やかし半分で聴いてみると、意外や意外、これがまた良かった。最近ブルースが好きになってきたからなのか、いや、でもそれほどブルースって感じでもないよな等と思いながらの43分。なかなかの至福の時でした。このアルバム、あまり注目されずに、ほとんど語られる事のなかった様なアルバムだけど、スワンプ・ロックからブルースへの橋渡しをしながら、ブルースって実は演歌じゃね?という気分にもさせてくれるし、それでいていつもの粘っこいレオン・ラッセルのヴォーカルもちゃんと堪能できる、今の僕の中ではかなりの好感度を持ったアルバムとなりました。リリース当時の僕、どうしてこれの良さがわからなかったかなあと反省しながら、何度もリピート再生したのでした。
と、つい先日こんな事があって、レオン・ラッセルを再評価したばかりだったというのに、突然入って来た、死去のニュース。言葉に詰まってしまいました。
どうやら今年、心臓の手術をしたばかりらしく、快方に向かっている最中で、それが要因なのかはわからないけれど。でも、病院ではなく、自宅で亡くなったとの事だから、突然の事だったんだろうね。
74歳かあ。なんとも...お悔やみ申し上げます。
レオン・ラッセルは、サザンの桑田さんが影響を受けたという話を聞いて、洋楽を聴き始めた当初すぐに興味を持ったアーティストでした。
90年代初頭、大学生になった僕は、バイトのお金をCDにつぎこもうと決意、聴いた事のないアーティストのCDでも、気になったものは片っ端から買っていこうと思って、最初に手に取ったのが、レオン・ラッセルのベスト盤でした。
聴いてみたら、この粘っこい歌い方、桑田さんが影響を受けたというのがすぐに分かったし、曲も良くて、すぐにお気に入りになりました。
今の時代は、ネットで試聴したりしてからCD購入に踏み切るのが当たり前なので、当時のように、まったく聴いた事のないアーティストのCDを買う事は、今ではほとんどなくなりました。このような冒険的な買い方は、それはそれで楽しかったなあ。なんとなく耳にした事のあるアーティスト名やアルバム名を頼りに、さらには曲名やジャケットなんかも吟味して、これは僕の好みなのでは?と予想して、期待して、CDを買ってみる。そして、実際に、それが自分の好みの音楽だった時は、「アタリだ!」とすごく嬉しかったですね。今では、若い人は、そんなCDの買い方する人いないだろうし。そもそも、CD買わないんだっけ、若い人。
でも、僕がそんな買い方をした初めてのアーティストがレオン・ラッセルで、それが「アタリ」で、ほんと良かった。初めて冒険して買ったCDが「ハズレ」だったら、こんな買い方するんじゃなかった、無駄遣いだった、と思って、それからCDをたくさん買う事もなかったかもしれないですから。
そういう意味でも、レオン・ラッセルは、思い入れのあるアーティスト。
その後になってから、ジョージ・ハリスンとの絡みなんかも知る訳でして、『バングラデシュ・コンサート』を聴いたのは実は今年になってからだったりもする訳ですが、思い入れがあるのはもう1つ、彼の来日公演を観た思い出もあるからなのです。
1993年4月の事です。
レオン・ラッセルの日本ツアーで、なんと、我が埼玉の大宮ソニックシティでの公演が組まれたのです。
日本での知名度を考えたら、それほどビッグ・ネームではないので、東京でやれば充分だろうに、どうしてわざわざ埼玉なんぞに?と不思議に思いながらも、せっかく埼玉に来てくれるならと、嬉しくなってチケットを獲ったのです。
それが、前から3列目くらいの良い席だったように記憶しています。ライヴでこんな良い席が獲れるのはなかなかない事。これは良かったと思ったのも束の間、こんなに良い席が当たったのは当然で、当日の大宮ソニックシティはガラガラだったのでした。1階席の半分も埋まってなかったような気がします。やっぱり、埼玉でやるのは無謀だったんです。
でも、こんなにガラガラで、レオン・ラッセルが気を悪くするんじゃないかと心配で、逆に、応援する気力が湧きました。せめて、会場にいる人達だけでも充分盛り上げようと、大きな拍手や声援で応えました。そんな思いは僕だけじゃなかったと思います。会場全体が温かい雰囲気に包まれていたのを憶えています。
正直、どんな曲をやったのか、今ではほとんど憶えていません。そんな事情ですから、当時の資料もほとんどなく、ネットで検索しても出て来ません。ただ、僕が期待してた曲は結構やってくれたんだったと思います。
強烈に憶えているのは、ステージに現れて、杖をつきながらヨタヨタとピアノに向かって歩いてきたレオン・ラッセルの姿です。おお、ホントに仙人みたいだ、と。レジェンドを目にした感がハンパなかったです。
とにかく、観客が少なくて申し訳ないと思う気持ちが強くも、それが逆に印象に残って、観客全員で温かくレオン・ラッセルを迎えた、とてもいいライヴだったという思い出です。
昔から、レオン・ラッセルはあの仙人のような風貌で、もう何十年も前から既にお爺ちゃんだったかのような感じなのですが、そうですか、74歳で亡くなったのですね。
どうぞ、安らかに。