[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2001年頃に書いた記事です
事実上のラスト・アルバム。
ビートルズは既にバラバラ、ほとんど解散状態だったのにもかかわらず、ムリヤリ集まって作り上げてしまった作品。最後の力を振り絞ったという感じ。それにしては出来過ぎだよ...というか、ほとんど奇跡。いや、それもビートルズならばこそ成せる業だったのか。とにかく凄いものを作ってしまった。
初期の魅力とはまったく別の魅力が詰まっている。
ビートルズに興味がなかった僕でさえ、このアルバム・タイトルとジャケットは知っていたのだから、一般人への(その存在の)浸透度も高いと思える。
僕がビートルズを意識するきっかけともなった「カム・トゥゲザー」。
とにかく、重たいベースのフレーズとドラムが強烈な印象。後期のジョンの特徴でもあるクール&ヘヴィが全開。
で、さらにヘヴィを追求したのが「アイ・ウォント・ユー」。
これまた重たい。ベースが気持ちいい。ラストはいつ終わる?いつ終わる?...とハラハラしながら聴くのがよろしい(笑)。
A面はこの曲で終わるので、その後の「ヒア・カムズ・ザ・サン」を聴くとホッとする。
ジョージの曲としてはもう一曲、「サムシング」も入っていて。
このジョージの曲のクオリティの高さも、このアルバムがビートルズの最高傑作と呼ばれる理由のひとつとなっているのだろう。
ポールはお得意ボードヴィル調の「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」、
わざわざ声をつぶしてのシャウト「オー!ダーリン」など。
リンゴも自作曲「オクトパス・ガーデン」を披露するなど、A面...いや、B面頭の「ヒア・カムズ・ザ・サン」までが、メンバー各自の曲を【いつも通りに】聴かせる、という感じで、僕の中ではひとまとまりなのね。
で、次の1曲が、僕が一番【解散】を意識させられる曲なの。「ビコーズ」。
ジョン、ポール、ジョージ3人のハーモニーは素晴らしく、どうしてこの曲に【解散】を意識させられるのかはわからないけど。せつないと言うよりやるせない。でも美しい。その雰囲気から、崩壊の美学みたいなものが感じられる気がするんだよね。
で、「ビコーズ」での解散宣言を受けて、ここから奇跡のメドレーが始まる。「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」。
ピアノのイントロからAメロ、初めて聴いた時は涙が出るくらいせつなくなった。胸が締め付けられる思いがした。なんでこんなメロディが考えられるんだろう、と。これもまたポールの真骨頂。
「サン・キング」ではいったんゆったりと落ち着かせ、
「ミーン・ミスター・マスタード」では、ひきずるような、だらけるような雰囲気に(笑)。
そして眩しいくらいのギターの音と共に始まる「ポリシーン・パン」から徐々に盛り上がっていき、
「シー・ケイム・スルー・ザ・バスルーム・ウインドウ」ではお祭り気分(てのはちょっと言い過ぎ?)。
冷静に考えてみると、「サン・キング」~「シー・ケイム~」の4曲は、それぞれを独立した形で完成させてたら、たいした事のない曲になってた可能性もある。でもそれらを、(実は1曲としては成り立たないからこその苦し紛れだったかもしれないが)メドレーとした事で、各曲が映え、ものすごく輝きだしたと思う。
そして「ゴールデン・スランバー」~「キャリー・ザット・ウエイト」。
ポールならではの壮大なバラード。途中に「ユー・ネヴァー~」のフレーズが出てくるアイデアもマル。
もうこの辺りの流れは何度聴いても涙ものなんではないだろうか?ビートルズが終わっちまうよ...って。
「ジ・エンド」になると、もう吹っ切れちゃってるからね。突き抜けてる。解散を楽しんじゃえ、ってさ。
リンゴのドラム・ソロもいいし、順番に弾きまくるギター・ソロも、どれもものすごくカッコいい。最後にこんな事やるなんてね。やっぱカッコいいよ、ビートルズは...。
最後の最後の「ハー・マジェスティ」は、ホントにおまけ、って感じで(笑)。
まあ、とにかくすごいさ、これは。解散うんぬんを考えなくても名盤。考えるともっと名盤。
ただ、この素晴らしいアルバムにいちゃもんを付けるとするならば。
よく考えてみると、アルバムとして全体を見てみると、作りは中途半端なんだよね。後半のメドレーにしたって、B面の頭からじゃないんだもの。思いっきり中途半端じゃない?『サージェント』制作時のビートルズだったら、A面頭からのメドレーを考えたっておかしくなかったと思う(アナログはA・B面があるので、完璧なメドレーはムリだけど、理念としては考えられたはず)。
そのメドレーの中途半端さに、やはりビートルズは解散ギリギリのところでやってたんだな、全曲メドレーを作り上げるまでの力はなかったのだな、という気がするんだよね。
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