17年リリースの新作。ベスト盤も含めて8thアルバムという事になっている。
まず、文句から言いたい。
AKBのアルバムは、ここ何作か2枚組で、2つのTypeが出ており、Disc 1が共通内容、Disc 2がまるっきり違う内容という事で、実質3枚組の様なアルバム仕様となっていた。それでDVDまで付いて3000円台で買えてしまい、コスト・パフォーマンス的にもお買い得感があり、非常に充実したものとなっていた。
それが今回は、2枚組ではなく1枚モノ。それでいて2Typeあり、それぞれ4~5曲内容が違うというものとなった。
この、Typeごとに数曲だけ内容が違うっていう作り方に怒りを感じる。以前までのように、Disc1枚まるっきり違う内容ならまだいいのだが、この、微妙な感じの違い。マニアなら、両方とも買いたくなってしまう所だが、なにしろわずかな違い。両方ともは買えない場合は、じゃあどちらを買えばいいのか、非常に悩むところ。どっちのTypeに、自分好みの曲が入ってるかわからないんだから、賭けでもある。
こういうアルバムの作り方を考え出したのは、たぶんAKBグループだと思うんだけど、ホント大っ嫌い。今まではNMBや乃木坂のアルバムでこの手法が使われていたけれど、とうとうAKB本体のアルバムもその作りになってしまった。
こういう、微妙な違いがあっても、同じ作品として売り出されている所にも違和感を感じる。収録曲が違えば「別の作品」だと思うのが普通でしょ?なのに、同じ作品としてタイトルが付けられ、売られている。これは、同じタイトルにすれば、売り上げは両方の合計として考えられるから、ランキングや売り上げ枚数に少しでも有利に働くようにという計算だ。これもむかつく。ひとつの作品としての完成度じゃなくて、あくまで売り上げに目が行っている。アルバムという作品を軽んじている気がしてならない。
さらに、今回のアルバムが最悪なのは、手抜き感がはっきり見てとれる所だ。
なんと、1曲目からシングル曲をリリース順に並べただけ。で、それだけだと曲数が少ないから、後半に新曲を「足した」だけという構成。
これが、ベスト盤なら、なんの問題もないんだ。シングルをリリース順に並べるのは、僕も大賛成。だけど、これはオリジナル・アルバムだよ?こんな作り方でいいのか?アルバムは、ひとつの芸術作品なんだから、普通のアーティストは、曲の雰囲気や流れ、バランスを考えて、曲順に頭を悩ませ、こだわりを持って作っているはず。そうやって、アルバムの世界観を作り上げているんだ。
なのに、このアルバムの作り方はなんだ。流れやバランスなんて考えてない、ただ曲を並べただけの構成。
つくづく、秋元康って、シングル至上主義なんだなあ、って思う。アルバムを芸術作品として考えてない。アルバムの存在意義を軽んじている。きっとこの人は、昔から、アルバム単位でなく、曲単位で音楽を聴いてきた人なんだなあ、と。コンセプト・アルバムなんて、まるで興味ないんじゃないか?
たしかに、最近は、秋元康に限らず、音楽は曲単位で聴かれる傾向にある。パソコンやスマホ、iPodやウォークマンで、好きな曲だけ、自分の好きな曲順で気軽に聴いてる人の方が多いんだろう。
いくらアーティストが、アルバムの曲順に頭を悩ませても、それはほとんど意味のない事になっていってしまってる。
アルバム文化の崩壊だ。
だけど、僕はアルバムが好きだ。
たまに、自分の好きなプレイリストで聴く事もあるけれど、基本は、今でもアルバム単位で音楽を聴く事にこだわりがある。
そこに、アーティストの考えがあると思っているからだ。
オリジナル・アルバムは、ひとつの芸術作品だ。
それを、大事にしてほしい。
そんな思いを抱いてたので、今回のAKBのNEWアルバムには、良い印象は持てないんだけれど、好きな曲がたくさん入っているので、「買わない」という選択肢はなかった。
どちらのTypeを買えばいいのか、当然迷ったけれども、大きな決め手となったのは、Type Aには、山本彩と稲垣潤一のデュエット曲が入っている事。さや姉推しの僕としては、これを買わない手はない。曲数が1曲多いのもさらに魅力。
よって、Type Aを購入したのであった。
1曲目「唇にBe My Baby」。
前述した通り、このアルバムはシングルをリリース順に並べているので、前アルバムのリリース以降のシングルとなると、必然的にこれが先陣を切る事となる。
高橋みなみの卒業を記念して作られたもので、王道のアイドル曲と言われてたけど、たかみなが好きではない僕としては、ほとんど心が動かない曲。この曲でアルバムがスタートするの?うーん。
2曲目「365日の紙飛行機」。
朝ドラ『あさが来た』の主題歌だったのに、「唇にBe My Baby」のカップリングという不当な扱いを受けた曲。素晴らしい曲だし、これをタイトル曲にして、堂々と、大々的にアピールすれば、もっと国民的名曲となって歌い継がれただろうに、と思われる。
まあ、それでも、カップリング曲だからアルバムには収録されない、という最悪の事態を避けられたのは良かった。こうしてアルバムの中にちゃんと収められ、じっくりと聴けるのはいい。
さや姉がセンターとなって、一般層にもさや姉の存在を知らしめる事ができたのも嬉しかった。
3曲目「君はメロディー」。
爽やかながらもスピード感があり、どことなく切ない。こういうタイプの曲は大好きだ。ヴォーカルでもPVでも、OGを投入して豪華さをアピールしてたけど、曲そのものがいいんだから、別にそんな事しなくてもいいのに、と思ってた。話題が「人」に行ってしまって、曲の良さが語られないのはいかがなものかと。
4曲目「翼はいらない」。
「翼をください」のアンサー・ソングとして、フォーク調の楽曲であり、PVも学生運動真っ只中のヒッピー臭漂う古臭い感じが印象的だった。嫌いではないし、聴いてるとだんだん好きになるタイプではあるんだけど、フォークって、やっぱ地味だよね。
5曲目「LOVE TRIP」。
指原の総選挙1位獲得曲で、やっぱ指原は曲に恵まれている。いつもいい曲をあてがわれる。歯切れの良いギターのカッティングも含め、久々にカッコいい曲。全編に渡ってメロディも素晴らしいのだけど、特にサビ後半の「♪ 恋はいつしか上書きされて行くもの」とか、Cメロの「♪ 君に会えたら何を言えるのだろう」のあたりなど冴えわたっている。何度も聴きたい。
6曲目「しあわせを分けなさい」。
「LOVE TRIP」と両A面扱いで、結婚情報誌のCMソングにもなり、結婚ソングとして大々的にプッシュされてた。感動を狙うものとして、必然的にバラードとなったわけだけれど、バラード苦手の僕にはあまりグッと来ない。うーん、まあ、結婚で幸せ満喫してる人達周辺にとってはいい曲なのかもしれないけど。
7曲目「光と影の日々」。
どこかで聴いた事あると思ったら、『熱闘甲子園』のテーマ・ソングだって。これもバラード。甲子園で勝者を称える曲ではなくて、敗者にスポットを当てるというか、むしろ、甲子園に出られなかった多くの者たちの影の努力を感じさせる曲だよね。冒頭でさや姉の声が目立って聴こえるのがいい。
8曲目「ハイテンション」。
「LOVE TRIP」がいいシングルだと思ってたら、その次にもっといい曲が来た。僕のテンションも上がった。
うちの母親はこれ聴いて、「モーニング娘。みたいだ」としきりに言っていたのだけど、たしかに、一時期つんく♂が得意としていたモーニング娘。のディスコ調ではある。「♪ テンションションションションション」が、「♪ 超超超超いい感じ」とダブるのかな。
これは島崎遙香の卒業記念ソングという事で、いつもローテンションのぱるるにこんな曲当てたのは皮肉とも思えるんだけど。まあ僕は、誰がセンターだろうと、いい曲だったら関係ないかとも思ってるので、素直に楽しんでいる。刹那的なラップもいいな。
9曲目「あの日の自分」。
ここから既発のシングル曲ではなく、アルバム用の新曲となるのだろうか?これは一応、映画の主題歌という事で、発表済みではあったようだけど。で、またバラードで、印象としては、さっきの「光と影の日々」と似た様な感じ。
10曲目「Get you!」。
この10曲目以降が、Type Bとは収録曲が違う。
さっき「ハイテンション」がモー娘。っぽいという話をしたけれど、なんとこれは、そのモー娘。とのコラボ・ソングとなった。AKB側は指原の単独参加。モーオタとして有名な指原の存在がこれを生んだのだろう。
曲としては、AKBっぽいような、モー娘。っぽいような、どっちつかずで、これはこれでコラボ成功と言えるのかもしれないけど。
それにしても、特に、2番の冒頭。ここを誰が歌ってるのかわからないけど、これがとてもミキティに似てるんだ。ここに、モー娘。のヴォーカル・トレーニングの伝統を感じる。モーニング娘。は、歌い方がなっちっぽいとか、高橋愛っぽいとか、ヴォーカルの発声法に芯が通っていて、伝統を受け継いでいるんだなあ、というのをつくづく感じる。
11曲目「誕生日TANGO」。
その名の通り、どこかタンゴの香りがする。今AKBで1番大好きな加藤玲奈が参加してるのだけど、実は歌声を聴き分ける事がまだ僕にはできなくて、小嶋陽菜の声ばかりが目立って聴こえて仕方ない。
12曲目「コイントス」。
岡田奈々のソロ曲。以前は、真面目だけが取柄で、あまり目立たないんだろうなと思ってた彼女が、ついにアルバムでソロを取るまでになったのかという驚きがある。
「♪ コインコインコイン」と焦った感じで歌うのが、なんかウケる。
13曲目「ひび割れた鏡」。
どこかうらぶれた感じのマイナー歌謡。
14曲目「過ち」。
アルバムのラストにして、最大のお楽しみ、さや姉と稲垣潤一のデュエット。
こんなアイドルのアルバムで、突然稲垣潤一の声が聴こえてくると、やっぱりかなり浮いてるんだけど(笑)、まあ、これが期待を裏切らない素晴らしい曲だった。サビの「♪ 過ちならば」のメロディの心地良い事!改めて、さや姉のシンガーとしての魅力が感じられる。でも、デュエットとは言え、ムード歌謡でも演歌でもなく、艶っぽい面はあまり見えないのは、さや姉のキャラ故か?
今回もいい曲がたくさんあって、それなりに満足はしている。
光と影の対比のような楽曲が並んでいるアルバムだと感じる。ま、そういうタイトルの曲があるから、そういう印象を持ってしまうのかもしれないけれど。
AKBファンではない一般層にもおススメしたい楽曲集ではある。
だけど、冒頭でさんざん言ったように、オリジナル・アルバムの作り方としてはどうよ?という不満が拭えないので、どうにも納得はいかないところがある。
ただ、以前にも僕は言っていたように、久しぶりに1枚モノのすっきりしたアルバムにしてくれた事に関しては良かったと言いたい。
AKBはもはや落ち目で、乃木坂や欅坂に完全に勢いは移ってしまっているというのが、メディアでもファンの間でも言われているのだけど、僕にとっては、いつも清楚路線で似た様なイメージの曲ばかりの乃木坂に比べたら、「君はメロディー」「翼はいらない」「LOVE TRIP」「ハイテンション」といった、タイプの違う曲を連発しているAKBの方がはるかに魅力を感じる。
アイドル業界は「人」優先だから、世間ではそう評価するのかもしれないけど、僕は「曲」優先だから、いい曲を出し続けてくれる方を支持する。
VIDEO ↑「過ち」
アルバムのラストにして、最大のお楽しみ、さや姉と稲垣潤一のデュエット。
こんなアイドルのアルバムで、突然稲垣潤一の声が聴こえてくると、やっぱりかなり浮いてるんだけど(笑)、まあ、これが期待を裏切らない素晴らしい曲だった。サビの「♪ 過ちならば」のメロディの心地良い事!改めて、さや姉のシンガーとしての魅力が感じられる。でも、デュエットとは言え、ムード歌謡でも演歌でもなく、艶っぽい面はあまり見えないのは、さや姉のキャラ故か?
それにしてもこの映像、さや姉が素晴らしすぎる!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●