[CAFÉ BLEU STYLE ARCHIVES] 2002年頃に書いた記事です
せっかく穏やかな気持ちで(?)『フレンズ』を作ったのにもかかわらず(しかも自分としてもお気に入りの作品となった)、チャート126位という悲惨な結果。
どうしてこうもうまくいかないんだと、ブライアンの気持ちはさらに最悪な方向へ。率先してレコーディングする事はもちろん、曲作りさえままならなくなってしまった。
そんなブライアンの状態を見て、自分達でなんとかしようとがんばる他のメンバー。結果、カールやデニス等の才能が開花し始める。
しかし、メンバーが「ブライアンの穴を埋めるためにも」とがんばればがんばるほど、ブライアンからしてみれば、「ブライアンなんていなくても平気」とみんなが思っているような気がしてしまったのではないだろうか。そんな誤解の中で、ブライアンはよりドラッグに溺れ、バンドの解散まで考えていったのではないかと。
バンド自体も、売上不振に加え、ツアーの中止や失敗等が重なり、非常に悪い状態でのアルバム作りだった。
僕がこのアルバムを買うきっかけとなったのは、『グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス』に入ってた「アイ・ウェント・トゥ・スリープ」と「タイム・トゥ・ゲット・アローン」がいい感じだったなと思ったから。
これならば、このアルバム自体も良い感じなんじゃないか?と期待してのものだった。
「アイ・ウェント・トゥ・スリープ」はブライアン作。
もともとは『フレンズ』収録予定だったというだけあって、ほのぼので穏やかな『フレンズ』の世界がここでも楽しめる。
パーカッションの音が時計のリズムにも似ていて、催眠効果があるというのか...うたた寝気分に浸れる佳曲。
「タイム・トゥ・ゲット・アローン」もブライアンの手によるもので、やはり『フレンズ』的世界観を感じさせる曲。
特にサビはとても優しく柔らかくて。ホント、こういう曲好きだなあ。
他にブライアン絡みでは、『スマイル』に収録予定だったという2曲。
「アワ・プレイヤー」は、アーとかフーとか言ってるだけのアカペラなんだが(笑)、これがまたいいんだわ。崇高な気分にさせられるというか、気持ちが引き締まるというか。
こういうのをサラッとやれる、っていうのはやっぱ凄い事だよね。ビーチ・ボーイズならではだと思うよ。
それから「キャビネセンス」。
こちらはバンジョーやハーモニカの音と共にゆったりのんびり始まるのだが、そこは『スマイル』収録予定曲らしく、組曲になっていて、一筋縄ではいかない。
ただ、それほど難解さは感じられない(歌詞は除く)ので、割とすんなり聴ける。
さて、他のメンバーの才能が開花したとの事だが、まずお薦めはデニスの「ビー・ウィズ・ミー」。
デニスの曲って、壮大なものが多いよね。ブライアンの曲とは違った重さがある。
それから「ネヴァー・ラーン・ノット・トゥ・ラヴ」もデニス作だが、実はチャールズ・マンソン絡みのいわく付きの曲だという。
ブライアンはこの曲を邪悪なものが漂っているとも言ってたらしいが、普通に聴いた限りでは、特に何も感じない(笑)。というか、割と好きだったりするんだけどね。この曲。
それから、ブライアンの代わりにツアーのサポート・メンバーとして加入してたブルース・ジョンストンが、いよいよ「ビーチ・ボーイズ」として自分の才能を表現し始める。
後の「ディズニー・ガールズ」でもわかるように、ブルースの曲は、とても優しくてファンタジック。
「ザ・ニアレスト・ファーラウェイ・プレイス」も、インストだけれど、とてもブルースらしさが溢れた佳曲。
木々の間から太陽の光がキラキラと見えるようで、優しい気持ちになれる。
カールは、コンポーザーではなく、プロデューサーとしての活躍。
「アイ・キャン・ヒア・ミュージック」「青空のブルーバード」等のカヴァー曲を、軽快にポップに仕上げている。
「アイ・キャン・ヒア・ミュージック」の方は、アコースティック・ギターの柔らかいコード・ストロークが印象的で、フィル・スペクター的サウンドだ。
シングル「恋のリバイバル」は、イントロのエフェクトをかけた音(ドラム)が、どうにもビーチ・ボーイズらしくなくて、初めは随分違和感を感じたものだ(この曲のみモノラル録音をステレオ化した音だった。というのも原因?)。
が、歌詞やハーモニー、サビの優しいメロディなど、初期のビーチ・ボーイズらしさがある気がする。
こうして、1曲ずつ取り上げてみると、なかなかの曲揃いなのに、アルバム全体でいうと、なんとなく地味な印象がしてしまうのは何故だろう。
個人的にも「もっと聴きこんでもいいよなあ」と思いながら、つい後回しになってる(笑)アルバム。
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